第九話
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点にして止まるものですから、何があったのかと聞くと……というわけですよ」
「文さん! ですから私のみまち……が……」
文とそんな話をしていると、離れたところで俊司に気付いていた張本人が、玄関から飛び出してきた。
「椛、どうやら見間違いではなさそうですよ」
「……うそ」
椛はそう呟くと、まるで手から離れた人形のようにぐったりとその場に座り込んでしまった。
「……思うんだけど、幻想郷の住人って幽霊とか亡霊とかもいるけどさ……死んだ人間が出てくると、やっぱり驚くもんなんだな」
「何をあたりまえなことを言ってるんですか」
「そうですよ。死んだ人間が亡霊になって帰ってくるなんて、そうあることじゃないですから」
「そうだよな」
俊司はそう言いながら軽く笑う。一同もそれにつられてくすくすと笑っていた。
その後、騒ぎを聞きつけた人達が集まり続け、彼を見た瞬間驚く・泣く・意味もなく笑うといったループが続いた。少しばかりではあるが、周囲は歓喜にあふれ、懐かしき仲間との再開を果たしていた。
「まったく、あなたも変なことを考えるのね?」
紫は玄関近くの壁に隠れながら、そばにいた緑髪の少女にそう言っていた。
「私は彼を利用しただけです。彼を死者として次の命を授けるのではなく、亡霊として舞い戻ってもらい、私も着いて行くといった考えだったのですから」
「そんなこと言って……頑固なあなたがそう考えるかしらね?」
「私は頑固ではありませんが?」
「そこが頑固なのよ」
紫がそう言うと、二人は軽く鼻で笑った。
「ところで八雲紫、あなたがなぜ彼を選んだのかわかりますか?」
「さあ? ただの勘じゃない?」
「……嘘ですね。あなたは彼の名前を聞いたときにわかっていたはずでしょう?」
「……」
映姫がそう言うと、紫はなぜか真剣な表情をしたまま黙り込んでしまった。
「言いたいことはわかりますが、ここまできた以上もとには戻れません」
「……わかってるわ。あの二人との約束を守れなかったのは残念だけど……やるべきことはするつもりよ」
「……そうですね」
紫はそっと物陰から俊司を見ると、軽く溜息をついて永遠亭の中に入っていく。そんな彼女の拳は、なぜか悔しさを感じさせるように強く握られていた。
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