暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜妖精郷と魔法の歌劇〜
帰路
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四つ目は、その翌日からネット上に無造作にばら撒かれた、一つのプログラム・パッケージ。
まるで、須郷達が消えたのと入れ替わるように現れたのは《ザ・シード》と冠せられた、フルダイブ・システムによる全感覚VR環境を動かすためのプログラム。
出自も不明、誰が作ったのかもわからないそのプログラムは、もはや消去するとかという次元を飛び越えてネット上を飛び回り、仮想課の連中の頭を抱えさせているらしい。
ただの偶然、と言うにはあまりにもタイミングが良すぎた。
四つ目のことはともかく、他の点はあまりにもできすぎている。
よって警察庁はこの事件を正式な《誘拐事件》とし、捜査を開始したと言うわけだ。
その中で間宮と藤沢が駆り出されたのは、三つ目。VRMMORPG《アルヴヘイム・オンライン》内での謎の大爆発についてのことだ。
ゲーム内のログから割り出した、爆心地の最も近くにいた人物達に事情を聴くためである。
歩きながら間宮は携帯端末を懐から取り出して上司である草薙から送られた、事情を聴くべき者のリストが記されたメールを発現させた。
リストといっても、実際そこに書かれている名前はそう多くはない。
桐ヶ谷和人。
デオドランド=アーセナル。
結城明日奈。
紺野木綿季。
ヴォルティス=ヴァルナ=イーゼンハイム。
そして────小日向蓮。
名前が横文字な連中はまだだが、その他の連中には話を聞いた。ただ一人、最後の一人である小日向蓮なる人物を除いては。
このリストに載っている人物が持つ共通点は、何も”爆心地近くにいた”というだけではない。
約二ヶ月前に解決された、二十一世紀最大の事件と名高い《SAO事件》の虜囚。ネット用語的に言う《SAO
帰還者
(
サバイバー
)
》という奴だ。
そのため、現実での名前を割り出すのにそんなに苦労しなかった。
「しかし、んなガキが今回の
事件
(
ヤマ
)
に関係あると本当に思ってるんスかねぇ、
草薙
(
おやっ
)
さんは」
病院内ではお静かに、というごく一般的なマナーなど歯牙にもかけないような藤沢の言葉に、しかし注意するのも面倒くさく、間宮は口を開いた。
「思ってねぇから俺達二人しか向かわせなかったんだろうが。あくまでも念のためっつーこった」
「はぁ、そんなもんスか。………っと、538号室。ここみたいですよぉ」
藤沢が立ち止まり、勢い余って通り過ぎようとしていたドアを指差す。
薄いグリーンに塗装された扉のすぐ横には鈍く輝くネームプレートが据えられている。
《小日向蓮 様》というその表示の下には、一本の細いスリットが走っている。間宮は胸から、高級ホテルのロビーめいた一階受付で受け取った通行パスを外し、その下端をそこに滑らせた。
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