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それぞれの白球
加持編 血と汗の茶色い青春
一話 礼を是とせよ
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第一話



兄貴は、俺を是礼に行かせる為に、野球を辞めた。勉強に勉強を重ねて、「お勉強私学」の奨学生になった。

「俺には才能は無いけど、お前は違うから」

そう兄貴は俺に言ったんだ。
確かに中2の段階で、是礼が俺にビッミョーな興味を示してたのは知らされてたんだが。
でもまだ是礼に行けると決まった訳じゃないし、何より俺自身にそこまでの気持ちがあった訳じゃない。

でも兄貴はそうしちまったんだ。
俺に夢を託したんだ。

それを裏切れるほど、俺は自分勝手にはなれなかった。必死に練習して、特待まではいかないまでも、是礼の野球推薦は何とか貰えるようになったよ。

そんな理由があって、俺の高校3年間は始まった。





ーーーーーーーーーーーーーー



俺達新入生は全員一斉に、高野連が新入生の練習参加を解禁する日に入寮した。

施設見学に来た時に見た是礼の野球部寮は全室2人部屋だが、建物自体も相当綺麗で、まるでマンションみたいな立派な寮だった。
是礼の一般生はお坊ちゃんが多いという話もあり、学校自体、結構金持ちらしい。

伝統と実績のある野球部の練習グランドは、専用球場にサブグランド、室内練習場と三つ。
トレーニングルームも完備だ。
食事は朝昼晩、栄養士が作ったメニューを食べられる。

道理で、俺が是礼で野球やる為には兄貴が金を使っちゃいけない訳だ。
親は学費の事については具体的には教えちゃくれなかったが、安い訳がないだろう。

これが、甲子園に行く学校か。
そこで、俺は3年間野球するんだ。

そう考えると、俺は少し楽しみになってきた。





そして、そんな気持ちは長くは続かなかった。




ーーーーーーーーーーーーーー



「是礼学館野球部へようこそ。今日から3年間、君たちは仲間だ。和を尊び、切磋琢磨してお互い成長していくように。」

食堂に一度集められた俺たちは、入部に際しての訓示を部長先生から聞かされた。
大人の退屈な話なんて、誰も聞いちゃいない。
隣のヤツが気になって仕方がないんだ。
そりゃそうだ。40人以上居るのに、試合に出れるのはたったの9人、ここに居る全員が競争相手なんだからな。全員が全員、鼻っ柱が強くて俺がナンバーワンだってな面構えをしている。
早くも同級生同士で火花が散り始めた雰囲気が、俺には感じ取られた。

しかし、そんな新入生共も、このひょろ長いジジイが前に現れると、背筋を伸ばした。

「監督の冬月だ。我々是礼は名の如く、礼を是とする学校だ。野球部は率先してその範を示す集団でなくてはならん。挨拶、敬語、それらはできて当たり前。目上の者には必ず従い、同期生同士でも礼節を守る事。分かったか?」
「「はい
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