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剣の丘に花は咲く 
第三章 始祖の祈祷書
第一話 蘇る者
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は二種類あってな、杖とパンだ。とりあえずトリステインとゲルマニアには暖かいパンをくれてやろう」 
「……」
「トリステインは、なんとしてでも余の版図に加えねばならぬ。あの王室には『始祖の祈祷書』が眠っておるからな。聖地に赴く際には、是非とも携えたいものだ」
 
 そう言って満足げに頷くと、クロムウェルは去っていった。
 クロムウェルが去っていったのを確認した男と達は、立ち上がるとそれぞれその場から立ち去って行ったが、クロムウェルに質問した若い男は、顔を俯かせて立ちすくんでいるワルドに向かって歩いていった。

「おい貴様っ! いくらウェールズを殺したからって、閣下にあの態っ……ひっ!」

 ワルドのクロムウェルへの態度に対し、文句を言おうと思った男は、ワルドに近づいたところで足を止めると、すぐに踵を返し走り去ってしまう。
 
 

 男は聞いたのだ、ワルドの近くに寄った際、彼の声を……近づかなければ聞こえないほどの声で呟く彼の声を……。




「ないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないない」 


 恐怖と焦りが入り混じった声を……


「ないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないない」

 
 絶望と後悔が入り混じった声を……


「ないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないないない」


 壊れたレコードのように繰り返すワルドの声を……

 


「奴の死体が……ない……」
  

  



 
 
  
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