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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第一話 烈風
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 それら一連の行動を見ていた対面に座るキュルケが、片頬だけを上げた奇妙な顔で呆れた声を上げる。黙り込んだままの士郎とルイズの様子に、キュルケは隣に座るタバサに顔を向けた。タバサは握った自分の大きな杖を見下ろしたまま微動だにしない。
 そもそも何故、タバサがここにいるのかと言うと、ラ・ヴァリエール家に向かう際、士郎たちはタバサに母親と共にキュルケの実家に残るように勧めたのだが、タバサが頑としてそれを了承しなかったため、同行することに相成ったのである。タバサの母親も、キュルケの実家ならば安全だと言う判断もそこにはあった。未だにタバサの母親の心は病んだままであるが、以前よりも落ち着いた様子であることから、キュルケの実家で保護することに問題はなかった。
 タバサはキュルケの視線を感じたのか、手に握った杖から視線を上げると、最初にキュルケ、次に視線を前、士郎とルイズに向け、

「怯―――えてる?」

 コテリと小首を傾げた。
 キュルケも顔を前に向けると、口の端を曲げ首を傾げる。

「ねえルイズ? あなた本当にどうしたのよ? 顔をそんなに真っ赤にして震えて……恥ずかしがってるのか、それとも怯えてるのかハッキリしてちょうだい」
「うるさいわね」

 顔を伏せていたルイズは、微かに顔を上げると、顔に掛かった髪の隙間からキュルケを睨めつけた。

「分かっていない人がごちゃごちゃ言わないで」
「あら? 随分なものいいね」

 膝に肘を当て、手のひらに顎を乗せたキュルケが面白そうに口の端を曲げる。
 自分に向けられるキュルケの冷めた視線に気付くと、ルイズは伏せていた顔を上げ、頭を振って目を伏せた。

「っ……ごめん。言い過ぎた」

 背もたれに寄りかかりながら足を組んだキュルケは、軽く肩を竦めてみせる。
 
「ふっ……構わないわよ」

 顔を反らして小さく呟くルイズの姿に鼻を鳴らしたキュルケはにやりと笑う。

「で、結局何でそんな摩訶不思議な状態になってんのよ?」
「……ま、色々あるんだけど―――実家に帰るのが怖いのよ」
「そこまで怖がる必要があるの?」
「……普段ならここまで怖がらないわよ。ただ、今回は違うのよ……わたしが『規則』を破ってしまったから……」

 頭を両手で抱えて蹲るルイズに、キュルケは疑問符が浮かんだ顔を向ける。

「は? それがどうしたのよ? 規則って法律のことよね? でも法律を破ったのは確かに悪いことだけど、そこまで怯える必要ある? お姫さまも今回のことは黙認してたんでしょ実際のとこは? それはまあ、それなりの罰は受けるかもしれないけど、そこまで怯えなくても」
「―――『烈風』のカリン」
「―――ッ!?」

 キュルケの疑問に答えたのは、ルイズではなく、キュルケの横に座るもう一
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