第十一章 追憶の二重奏
第一話 烈風
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ったという事なのか?」
「そう、ですね。……詳しいことは話せませんが、ある方から魔道具をいただいたんですが、それを身につけている間は全く健常者と変わらなくなるというものです」
目を細めながらもしっかりと頷いたカトレアに、テーブルに身を乗り出しそうなほど身体を前に出した公爵が目を見開く。
「それは本当なのか?」
「ええ。疑われるのなら、今ここで魔法を使ってみせましょうか?」
公爵の質問に、カトレアは杖を手にとって軽く降ってみせる。じっと娘の目を見ていた公爵であったが、目を閉じ小さく頷くと、背もたれに深く寄りかかり左右に首を振った。
「……いや、構わん。お前が嘘を言うとは思えんからな……だが、その魔道具はどんなものなのだ? それにそれを与えた者というのは?」
「ふふ、そこは秘密ということで」
唇に人差し指を当てニッコリと笑うカトレアに、公爵は眉根に皺を寄せ天井を仰いだ。
「っ、はぁ……お前はルイズやエレオノールとは違った意味で厄介だな」
「あらお父さま? 娘にその言いようはどうかと思いますわ」
「……返事の手紙にこれでもかと言うように、でかでかと『ラ・フォンティーヌ家当主』と書いておいてその言いよう……全くお前だけは違うと思っておったのに」
可愛らしく小首を傾げる娘に対し、ジト目で睨みつけた公爵は口元をヒクつかせる。
「っ……、まあ、いい。詳しい話は後、後だ。今はルイズの話だ。ただでさえ王政府から快く思われておらん時にこれだ。何か考えなければならんな」
そう言って公爵は難しい顔で腕を組み俯く。
公爵の言葉通り、現在、ラ・ヴァリエール家は王政府に快く思われていない現状にある。それもこの前のアルビオン戦役にラ・ヴァリエール家が出兵をしなかったためであった。そのため、莫大な軍役免除税を払うことになったが、ラ・ヴァリエール家にとってそれは特に痛手ではない。それよりも問題なのは、以前からラ・ヴァリエール家を良く思っていなかった出兵した貴族たちから、これを機に勢力を削ろうと暗躍しているものがいるのだ。そういった者たちが、大人しくこの機会を指をくわえて待つとは思えない。
周囲の状況を冷静に思い返し、公爵は改めて難しい状況にあることを思い返す。だが、それでも出来るだけ娘に負担を与えないようにするにはどうすればと考えていた公爵の耳に、
「そう難しく考えなくとも良いのでは。陛下にお裁きを頂くよりも先に、当家がルイズに罰を与えれば良いのです」
危険な声が届いた。
「っ、ば、罰、とは、ど、どういった、それとだ、誰が……」
氷着いたような沈黙が広がるダイニングルームの中、カチカチと歯が鳴るのを自覚しながら、首を錆び付いた人形のように
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