第十一章 追憶の二重奏
第一話 烈風
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認できるようにする。士郎の意図を理解したカリーヌが、無言で背後を確かめる。そこには迫り来るカッター・トルネードの姿が―――
「なっ!?」
なかった。
呆然とした声を上げたカリーヌだったが、直ぐに口を閉じ歯を噛み締めると、士郎を睨みあげ、
「……これは、あの子が」
「中々のものだろ」
士郎が目を細めて肩を竦めて見せると、何かを言おうとカリーヌは口を開くが、続く言葉は出ることはなかった。それよりも先に背後から声を掛けられたからだ。
「っ、ぁ、っふ、ま、間に合ったと言えるのかはわかりませんが……もうそこまでにしてください。これ以上何かするつもりならば、わたくしにも考えがありますよ」
声が聞こえた方向に顔を向けた士郎の目に、馬に跨り、息を整えるアンリエッタの姿が映る。その後ろには、同じように馬に乗ったアニエスの姿もあった。
「シロウさんは公爵夫人を離してください。全くもう。女性を地面に押し付けるなんて、失礼ですよ」
「……命がかかっていたんでな」
苦笑いを浮かべ、小さく口の中で呟きながらもカリーヌから手を離した士郎は、立ち上がるとまだ地面に膝をついたままのカリーヌに手を差し出す。
「失礼をしました」
「……構いません」
一瞬躊躇したカリーヌだったが、直ぐに手を伸ばし士郎の手を取る。
その様子を見て小さく安堵の息を吐いたアンリエッタは、手を叩きながら辺りをぐるりと見回す。
「色々言いたいことはありますが、それもこれもまずはお屋敷に戻ってからにしましょう。行きますわよ」
手綱を引き馬を動かしたアンリエッタが、背後を見て声を上げる。アンリエッタが跨った馬が動き出すのを見たロングビルが、先程から地面に転がったまま動かないギーシュとマリコルヌを作り出したゴーレムを使って馬車の屋根の上に放り投げると、気疲れで倒れ込んでしまったルイズを抱えて馬車の中へと入っていく。キュルケとタバサがそれに続き、士郎もその後に続こうとした、が、
「待ちなさい」
呼び止める声に足を止めた。
振り返ると、そこにはカリーヌの姿があった。
「あなた名前は」
眼光鋭く視線を向けてくるカリーヌだったが、その眼光が先ほどよりも少し……ほんの少しだけ弱くなっているような……気がした士郎は苦笑を浮かべ振り返り。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの使い魔―――」
深々と頭を下げた。
「―――衛宮士郎」
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