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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第一話 烈風
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り、土煙が辺りを包む。局地的に発生した地震に身体のバランスを崩したカリーヌだったが、その鍛え抜かれた体幹により直ぐに立ち直る。視界を覆う土の煙を、そして直ぐにカリーヌは杖を一振りし、立ち上る土煙を散らす。晴れ渡る視界に、しかし、

「―――いない」

 そこに士郎の姿はなかった。先程まで士郎がいた場所には、渦を卷く竜巻の姿しか見えない。デルフリンガーにより一瞬大穴が空いた竜巻だったが、散らすには至らず未だその姿は健在ではある。が、肝心の士郎の姿がない。

「……何処に」
「完全に殺る気な魔法だなあれ」
「―――ッ!」

 隣で突然聞こえた声に、カリーヌは確認を取ることなく杖を声が聞こえた方向に振り抜く。その動きはメイジ(魔法使い)というよりも剣士。それも一流の腕を持つそれであった。虚を突かれ不覚と感じたカリーヌであったが、声が聞こえてきた位置からではこの抜き打ちには対応出来まいと自信を持って杖を振るった。その杖には鋭く固められた風が纏わりついていた。それはどのような刃物よりも鋭く鋭利であり、触れればスッパリと切り刻まれてしまうだろう。
 振り抜かれる鋭き風を纏う杖。
 だが、

「―――っ、な?!」

 杖を振り抜いた瞬間、カリーヌの視界が回った。天と地が入れ替わり、内臓が一瞬宙を浮き、血が頭に下がる(・・・)。全身に風を受け平衡感覚が一瞬だけ狂った後、

「―――か―――、は」

 気付けばカリーヌの身体は地面に押し付けられていた。
 うつ伏せの姿勢で地面に押し付けられ、杖を握っていた腕は横に膝を着く士郎に掴まれ関節を決められていた。全身が地面に縫い付けられたようにピクリとも動かず、それでも無理矢理身体を動かそうとすれば、極められた腕に電気が走ったかのような痛みが走り動くことさえままならない。押し付けられた顔を動かし、カリーヌは頬に土をつけながらも自分を押さえつける士郎を見上げる。

「き、貴様、何を―――」
「何もしないと約束してくれるのなら説明するが」
「……なら結構」

 頬を撫でる風に士郎が顔を上げる。そこには、

「この状態でも操れる、か」

 竜巻が迫ってきていた。士郎は押さえつけるカリーヌを見下ろす。

「このままだと一緒に巻き込まれるが?」
「そうですね。ですがそれがどうかしましたか?」
「はっ、全くこの親子は」

 冷たささえ感じさせる視線で士郎を見上げてくるカリーヌに、士郎は口元に引きつったような笑みを浮かべる。
 間近に迫った竜巻の風を巻く音が耳を叩く。ただの竜巻であっても巻き込まれれば無事では済まないが、この竜巻は更に危険な代物であり、早く逃げなければ無事で済むどころか命の危機である。だが、逃げようとすれば、その隙をついて何を仕出かすか分からない者が一名
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