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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第一話 烈風
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「どっ、どどどどうすんのよあれっ?!」
「あちゃ〜……これは凄いわね」
「『烈風』のカリンか……噂に違わず、だね」
「スクウェアクラスの魔法」

 馬車を降りた士郎たちの前には、暴風を吹き散らす竜巻の姿があった。手で顔を覆い、吹き付ける風から守りながらルイズたちは口々に文句を垂れる。その声色には、恐怖や驚き、呆れや感嘆の色が混ざっていた。
 ルイズたちの前に立ち。竜巻に立ちふさがるように立つ士郎は、腰からデルフリンガーを抜きながら溜め息混じりの声を漏らす。

「はぁ〜……竜巻でお出迎えとか、この娘にしてこの母と言うか、この母にしてこの娘と言うか……」

 抜き放ったデルフリンガーを垂らした士郎が迫る竜巻を見上げていると、

「ル〜イ〜ズ〜ッ!!」

 竜巻と士郎の間に空からゆっくりと幻獣に跨った黒いマントを羽織った騎士―――ルイズの母親が降りてきた。地の底から響いてくるようなその声を聞き、『これは話してわかる相手じゃないな』と思いながらデルフリンガーの柄を握り直す。
 ルイズの母親が大地に降り立つと同時に、ピタリと竜巻がその動きを止めた。
 マントを翻しながら幻獣から飛び降りたルイズの母親―――カリーヌが、一歩一歩力ゆっくりと足を動かし近づいてくる。口元を覆う鉄仮面と帽子の間から覗く眼光は炯々と輝き。まるで獲物を前にした獣のようである。獲物に忍び寄る獣のようにゆっくりと近付くカリーヌは、士郎から十メートル程離れた位置で立ち止まると、士郎の後ろに隠れるルイズを睨み付けた。

「ルイズ。前に出なさい」
「ひぅっ!」

 息を詰めるような悲鳴を上げたルイズは、ビクリと震え身を縮みあげる。何時までもビクビクと小動物のように震えて動かないルイズに業を煮やしたのか、カリーヌが一歩前に出た。その前に、

「―――少し、待ってくれませんか?」
「…………」

 士郎が立ち塞がる。
 ジロリと一際強く、そして鈍く輝いた眼光を向けられる士郎。
 だが、士郎は全く気にした様子を見せることなく、笑みを浮かべてみせる。

「ルイズが法を破ったのは確かですが、それには理由が―――」
「関係ないものは下がりなさい」

 鉛のように重く、剣のように鋭い声が士郎の声を遮る。
 笑みを浮かべたまま固まる士郎に、カリーヌは剣を向けるように杖を突きつけた。

「確かにルイズは以前から少しばかり考えなしなところがありましたが、これほど大それたことをするような子ではありませんでした」

 杖を突きつけられた胸元に目を向けた後顔を上げた士郎は、カリーヌに向かって肩を竦めて見せる。

「いや、十分しそうだったような」
「最近手柄を立てたことに調子に乗っていたと考えていたのですが……」

 士郎の顔に向けていた視線を動か
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