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剣の丘に花は咲く 
第十一章 追憶の二重奏
第一話 烈風
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に手を乗せた。ルイズは頭に乗った士郎の手を両手で掴み、ぷるぷると身体を震わせながら恨ましげな目でにらみ上げる。

「も、もももう少しって何時よ?」
「そうだな……」

 士郎が空いた手で顎に手を当てて声を上げると、

「……ねぇ、窓の外が何だかとんでもないことになってるんだけど」
「あ〜……ヤバいねあれ」
「……このままだと巻き込まれる」

 士郎たちの前に座るキュルケたちは、窓の外を見て口々に引きつった声を上げる。タバサの声は何時ものように平坦ではあったが、どことなく引きつっているようにも聞こえていた。
 キュルケたちの様子に、士郎とルイズの視線が窓の外に向けられる。

「あ、確かにあれはやばいな」
「ちょっ! か、母さまっ! 何やってんのよ?!」

 士郎たちの視線の向こう。窓の向こうに、巨大な竜巻の姿があった。巨大な竜巻はぐんぐんと近づき、

「……あ、巻き込まれた」
「へ〜……器用なもんだねぇ。ハーネストだけを破壊して、馬を残して馬車だけ空に飛ばすなんて。威力もだけど、ありゃ精度も桁違いだね。それはそうと……大丈夫かねあの子達?」
「……一応大丈夫そう」

 士郎たちが乗る馬車の近くを走っていたもう一つの馬車を包み込んだ。竜巻に飲まれた馬車には、士郎たち以外、つまりマリコルヌとギーシュが乗り込んでいた馬車であった。ギーシュたちが乗る馬車は空高く巻き上げられ、振り回され、掻き回されながら破壊されていく。砕かれた馬車の中から、叫び声を上げるギーシュとマリコルヌが放り出された。ぐるぐると洗濯機で洗われる洗濯物のように中空で回転している二人だったが、直ぐに竜巻の中からも放り出さた。竜巻から放り出されたギーシュたちは、地上に激突する前に『レビテーション』を掛けられたのだろう。ゆっくりと地面に下ろされた。しかし相当身体に負担があったのだろう。二人はぐったりと力なく地面に転がっている。二人が無事であることを確認した士郎は、隣りで同じく窓の外を見て、身体を痙攣するようにガクガクと身を震わせているルイズをちらりと見る。

「中々厳しそうな母親だな」
「あれの何処か中々なのよっ!? い、いいからもう離してっ! い、今すぐにでも逃げなきゃッ?!」
「まあ、流石に今度は俺もそれに反対はしない。とは言え逃げ切れんだろうな。まあ、まずは馬車を降りるか。逃げるにせよ、立ち向かうにせよ馬車の中は動きが制限されるからな」

 士郎は背中の壁を数度叩き、御者台に座るものに停車を頼んだ。士郎の合図を聞き、馬車がゆっくりとスピードを落としていく。それと共に、ギーシュたちが乗る馬車を完膚なきまで破壊した竜巻が、ゆっくりと士郎たちが乗る馬車に向かってきていた。
 馬車が止まりドアが開くと士郎を先頭にルイズたちが素早く降りて行く。


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