第十一章 追憶の二重奏
第一話 烈風
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母でもあります。結婚を機に衛士を辞めたのですが、その時の話をすれば長くなりますので、今はご容赦を」
「え、ええ分かりました。しかし……」
アンリエッタが改めて目の前に立つ、マンティコア隊の隊服を着るカリーヌを見る。何故そんな服を着ているのか? という問いかけを視線に混ぜて。視線でその続きに気付いたカリーヌは、アンリエッタに頷いてみせる。
「今、この時の私は公爵夫人カリーヌ・デジレではなく、鋼鉄の規律を尊ぶマンティコア隊隊長であるカリンとしてここにおります。これから国法を破りし娘に手ずから罰を与えることによって、陛下への忠誠の証とさせていただこうと愚考する次第です」
「……え? あ、あの、その、い、今なんと?」
アンリエッタの顔に浮かぶ笑顔がピシリと音を立てて固まる。
カタカタと震える身体で、小首を傾げ尋ねるアンリエッタに、カリーヌは厳しく引き締めた顔で頷いてみせ。
「この手で娘に罰を与えます」
―――この手で娘の首を獲ります。
「ち、ちち、ちっ―――ちょっとお待ちになってくださいっ!!」
アンリエッタの耳には確かにそう聞こえた……ような気がした。
青ざめた顔に汗を滲ませながら、アンリエッタは焦った調子で声を上げる。今更ながら、アンリエッタは自分がとてつもない失態を犯したことに気付く。いくら自分が黙認していたとはいえ、心配をかけた親友に対し少し意地悪をするつもりで今回の一件をラ・ヴァリエール家に伝えたことを……。勿論ただの意地悪だけでラ・ヴァリエール家に伝えたわけではない。黙っておくことで、公爵に迷惑がかかる可能性もあることから、事前に軽く報告し、詳しい話は今回の訪問と共に説明しようと思っていたのだが……。
か、完全に裏目に出ました―――ッ!!?
カリーヌの言葉を聞き、改めてその姿を見れば、確かにこれは王の出迎えのために正装をしたというよりも、
完全戦闘体勢という感じではありませんかっ!?
「乱暴はいけません! ええ乱暴はいけませんとも公爵夫人っ! そもそもわたくしはここに罰を与えるつもりでやってきたのではありませんっ! いえ、勿論無罪放免とするわけではありませんが、実は今回の一件は、色々と事情が入り組んでおり、一言で説明することが出来ず、よってこうしてわたくし自らが説明のため―――」
今すぐにでも頭を抱えて蹲りたい衝動に駆られながらも、アンリエッタは必死にカリーヌを止めようとする。
「陛下、分かっております。ご心配せずとも陛下のお心。このカリーヌしっかりと理解しておる所存です」
「で、では―――」
手を前に出しアンリエッタの言葉を遮ったカリーヌが深く何度も頷く。その姿に説得出来たかとアンリエッタの顔に赤みが戻りかけるが―――
「愚かな娘
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