第十一章 追憶の二重奏
第一話 烈風
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たはかの有名な『烈風』のカリン殿ですかっ!」
アンリエッタがアニエスの前に出る。跪く騎士の姿を改めて見るアンリエッタ。アンリエッタが知る限り、先代マンティコア隊隊長『烈風』のカリンが城に仕えていたのは今から約三十年前。そう考えると、確かに騎士の身につけるマントや帽子はどれも色あせ、年月を経たものと分かる。しかし、どれも年月による劣化は見られるが、それ以外の損傷はどこにも見られない。毎日丁寧に手入れをしているのだろう。
興奮を露わにするアンリエッタの姿に、目を細めた騎士は小さく頷く。
「はい。しかし陛下がその名をご存知とは驚きました」
「驚くもなにも、トリステイン王国史上最高のメイジと名高き『烈風』のカリンの名を知らぬ者などこの国にいるはずがおりません! 特にわたくしは、母があなたのファンだったので、子供の頃、わたくしはいつも寝物語であなたの武勇伝を聞きながら寝ていたのですから! アニエス殿! 勿論あなたも知っている筈ですよねっ!」
「……はい、勿論知っています」
目をキラキラと輝かせながら、興奮気味に声を上げる主を前にアニエスは、膝から崩れ落ちそうになるのを必死に耐えていた。
―――勿論知っておりますとも陛下……王宮で知らぬものなどおりません。『烈風』のカリン―――いえ、『鉄の規律』のカリンの名を聞いて怯えぬものなど……特にド・ゼッサール殿など、その名を聞いただけで失神するほどの怯えよう……今ならその理由が分かる……。
青ざめた顔のアニエスに気付くことなく、アンリエッタはカリーヌの手を取り立たせると顔を寄せ言い寄る。
「勿論わたくしも大変あなたに憧れていましたのよ! 数々の武功に勲章……貴族が最も貴族らしかった最後の時代! その時代最高にして真の騎士と詠われたあなたに憧れ、数多の騎士があなたを真似したと聞きました!」
「それほどでは」
「謙遜などなさらなくとも結構ですわ! あなたはそれだけの結果を示したのですから。でも、わたくしそんなあなたの秘密を一つだけしっておりますの。母から教えていただいたのですが、実はあなたが女性だということを。それにしても引退後はその行方が全く知られていませんでしたが、まさかラ・ヴァリエール家にいたなんて……今は何をなされておられるのですか?」
アンリエッタの問いに、カリーヌは顔の下半分を覆う仮面を外すことで応えた。仮面の下から現れた顔を見たアンリエッタの口と目が大きく開かれる。
「なっ、え? こ、公爵夫人っ!? 公爵夫人ではありませんかっ!?」
「「「「「はっ?!」」」」」
アンリエッタの言葉を耳にし、アニエスとその後ろに立つ銃士たちが一斉に呆けたような声を漏らす。
「こ、公爵夫人が、まさか『烈風』のカリンだなんて……」
「はい。そしてルイズの
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