第十一章 追憶の二重奏
第一話 烈風
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静かであった。
「今のうちに、打てる手は全て打っておかないと……」
音を響かせる勢いで手紙をテーブルの上に下ろすと、アンリエッタは一拍を持って顔を元に戻す。
すると、扉からノックの音が響いた。
「どなた、ですか?」
「私です。陛下」
アンリエッタが扉の向こうに問いかけると、銃士隊隊長のアニエスからの返事が帰って来た。
「少し待っててくださる」
テーブルの上に広げたものを整えると、椅子から立ち上がり扉まで歩いていく。
「すみません。少し考え事をしていまして」
アンリエッタが扉を開くと、そこには鉄で出来た花のように美しくも強いアニエスの姿があった。アニエスは胸に手を当て、アンリエッタに恭しく礼をする。
「そんな。気にしないでください。それで、私に用とは?」
「ええ。信用できる部下を数名手配してください。少し、行くところが出来ました」
「今すぐにでも動けますが、どうなされますか?」
アニエスを部屋に迎え入れたアンリエッタは、アニエスに背を向けた姿のまま立ち止まる。「そうですわね」と頬に手を当てたアンリエッタは、目線を上げ少し考える様子を見せると、小さく頷きアニエスに振り返った。
「直ぐに出ます、馬車の用意を。行き先はラ・ヴァリエールです。非公式の訪問ですので、馬車などもそれに配慮したものでお願いします」
「了解しました。……お顔が優れないようですが、どうかなさいましたか?」
疲労の浮かぶアンリエッタの顔に、アニエスが声をかける。
「ふふ……色々と考えることが多くて」
アンリエッタの顔がテーブルに向けられ、アニエスの顔をそちらに向く。テーブルに置かれた手紙を目にしたアニエスは、アンリエッタの背中に問いかける。
「陛下、あの手紙はもしや」
「……ええ、ルイズからの手紙です」
「手紙ということは、もしやガリアの姫君の救出の結果では」
「無事救出できたようです。お騒がせしましたと……全く、わたくしがどれだけ心配したと思っているのか、それに……」
「ガリア……ですか」
顔を俯かせ、微かに背中が丸くなったアンリエッタに、アニエスは小さく口の中で呟く。
「正体がバレていないのか、それとも他に何か考えがあるのか……ガリアからの抗議は今のところありませんが……」
「……彼らの越境行為に気付いているものは、今のところ見られません、が」
「それも、今のところ、ですか……」
気付いていない振りをして、アンリエッタがルイズをどうするのか見ている者がいないとは言えない。ここで何の処罰を与えなかったならば、これ幸いと噛み付いてくるものがいないとも限らない。だが、それもかもしれないなのだ。
「陛下はどうされるおつもりですか
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