暁 〜小説投稿サイト〜
IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十六話『新たな約束』
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たんじゃ」
そう言いながら少女――紅耀を自分の前に引き出し、皆の前に披露目する。
紅耀も白夜の手に引かれるまま前に出ると、一同をじっと見据えた後、小さな声で挨拶したのち一礼した。
「引き取るって……、飯はどうするんです? 師匠が作れるのは、精々焼き物とおにぎりと雑炊ぐらいじゃないですか……」
家事に疎いとはいえ、修夜が厨房に立てるようになるまでは白夜が食事を作っていた。だが修夜の言った献立以外だと、あとは刺身と冷ややっことサラダが限度であり、それ以外はスーパーの惣菜で凌ぐ日々が続いたのだ。
今となっては料理に一家言を持つ修夜にとって、目の前にいる小さな少女が“雑な食事”で育つことは、自分の倫理観において思うところに触れるのである。
ところが釘を刺してきた弟子に対し、師匠はとんでもないことを口にした。

「だからのう、お前に預けに来たんじゃ」

一瞬にして、場が凍て付いた。
「…………ぇ?」
「だから修夜、今日から紅耀を【お前の義妹とする】から、家族として兄として、ゆくゆくは【嫁の一人】として、しっかりと面倒を見るように!」

「……な……、な ん だ と ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ お お っ!?」

とんでもない話である。
ある日育ての親が女の子を拾ってきたら、その子を自分の義妹にされたばかりか、将来の伴侶にされてしまい、挙げ句はその面倒を看ろという、理不尽の三段セットが待っていたのだから堪ったものではない。
だが白夜の理不尽はこれに留まらなかった。

「あと、わしもここで暮らすことになったんで、色々とよろしゅうにのう」

一同が、一斉に口から「え」の音を零した。

「…………暮らす?」
「うむ」
「……師匠が?」
「丁度、学園専属の整体師を募集していたらしくてのう。この厚生棟の二階の空き部屋を借りて、久方ぶりに『白尾整骨院(しらおせいこついん)』の業務再開じゃよ」
「……マジで?」
「マジじゃよ、大マジ。ちなみに寝泊まりは、千冬たちと同じ場所じゃよ」
「…………悪い冗談というオチは……?」
「うむ、ない!」

保健室の面々はおろか、画面の向こうの拓海さえ、驚愕の表情のまま完全に固まっていた。
そして……、

「そ ん な 馬 鹿 な ぁ ぁ ぁ ぁ ぁ あ っ !!」

この日、これまでで一番の修夜の絶叫が、学園中に響き渡ったのだった。


――――

以降、どうやって許可を通したのか、修夜の部屋に紅耀も住むことが決定。人数の関係から、やむを得ず面積の広い寮の角部屋を改装し、そこを三人部屋にして、修夜・一夏・紅耀の三人で生活している。
拓海をして「先生の人脈は未知数」と言わしめる仁であるため、学園の運営本体に知人がいても不思議ではない、というのが修夜たちの見解である。

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