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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十六話『新たな約束』
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覆すのは容易ではないのだ。
しかしこの権利の発動は、自国への明らかな造反でもある。発動すれば最後、その管理官は祖国から居場所を失くし、そればかりか自分の親類縁者を巻き込み、その命の保証さえ危うくしてしまうのだ。
よってこの権利が施行されて以来、未だこの権利を行使したものは皆無である。
〔何故だ、お前ほどのエージェントが、何が目的で己の国に盾突くような真似を……!?〕
怒りと焦りを隠すことなく、長官は鋭い眼光で部下を問いただす。
対する楊は、依然として冷静さを保ったまま、理由を語りはじめる
「……正義、というのはいささか性分ではありません。ですが私も、国家の使者である以前に、一人の向こう見ずな若輩者なんです。人として、楊一族の一員として、…………一人の姉として、あの男の不義に目をつむることは、私の意に反するのです」
〔どういう意味だ〕
「……二年前、彼に妹を壊されました。代表候補生にも推薦させましたが、あまりに初歩的な操縦ミスで事故を起こし、そのまま今もベッドの上で眠り続けているんです。そのときの妹の教官が、他ならぬ清周英でした」
試合中に、楊が千冬と真耶に明かした事例の、これが本来の顛末である。
妹の事故原因を訝しく思った楊は、事故の原因を独自で調べてく内に、楊は清の生徒だった少女たちをはじめ、彼に関わった生徒の大多数が、不可解な理由で競争から離脱いていたことを掴んだ。
幸いにも情報部という部署にいる関係から、親しい関係者を通じて本命を、候補生の管理用資料に混ぜて送ってもらうことが出来た。本省に帰還した折には、暇を見つけては資料を基に脱落者たちを訪ね歩き、実状の収拾に勤しんだ。
そこで明らかになったことこそ、清の催眠実験による悲惨な被害の実態であった。
清の門下であったものの、現役で代表候補生を続けている者たちは、清の実験の効果が薄かったものであり、幸いにもその毒牙から免れたというのが、実際のところである。
つまり彼女たちは、清からしてみれば【二割の失態】なのだ。
この事実を掴み、楊麗々は人として、なにより一人の少女の家族として、清を中国IS競技会から追放する決意を固めた。
成し得ない場合には、最悪、諸共に果てる覚悟もあった。
ところが清と接触する機会に恵まれず、何より清を糾弾するために必要な決定打が、まだ用意できずにいたのだ。
そんな彼女にとって、拓海が白夜と黛から得た取材資料は、不倶戴天の敵を討つために欲してきた“必殺の刃”であった。
内容は、清のこれまでの行状の一切を訊き出した音声と、清のタブレットにあったそれらに深くかかわる証拠画像だった。
拓海が取材資料の内容の如何について、Aモニタールームの千冬に相談を持ち込んだことは、楊にとっては“今こそ誅す時”という天啓に他ならなかった。
ゆえに彼女は、拓海に自分の素
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