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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十六話『新たな約束』
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あの一夏が、鈴との約束の件について切り出した。
その声はコンソールのマイクを通じて、別の部屋にいる拓海たちの耳にも届く。
「よろしいんですか……?」
箒の横に佇むセシリアが、そっと問いかけてくる。
「な、何がだ……?」
問われた箒も、マイクには拾えない小さな声で返答する。
「一夏さん、凰さんのお気持ちに、お応えするかも知れませんよ……?」
セシリアに言われて、箒が苦み走った顔をした。
一夏に淡い想いを寄せているのは、箒も同じである。
しかし箒の場合、人に自分をさらけ出すのが苦手な性分もあって、一度として一夏に自分の気持ちを伝えたことがなかった。
幼馴染みとして普通に接することは出来ても、いざ異性として意識しだすと途端に自分に自信を失くしてしまう。それを隠そうと強がってしまうのが、恋愛におけるこの少女の弱みである。
もっとも鈴もほぼ同じなのだが、立っている地点では鈴のほうが一歩以上リードしている。
自分が一夏と離れて手の届かないうちにとはいえ、恋愛に先手も後手もない。相手の心を掴んだ方が勝者であり、敗者は潔く手を引くことで円満に収まるのだ。敗者が納得すれば、の話だが……。
そして当の箒は……、
「……決めるのは……一夏だ、私にそれを邪魔する権利なんて……ない……」
歯切れの悪い弱々しい言い方で、一夏にすべて委ねると決した。
邪魔立てが許されるなら、誰よりも箒があの場に突撃し、そうしたいに違いない。
たとえそこに修夜が立ちふさがろうと、それは問題ではない。言葉の先を言える雰囲気をぶち壊せれば、ひとまずは大成功なのだから。
でも、箒はしない。
ぶち壊したい衝動を必死に理性で組み伏せ、ただ必死に耐える。
「……何も言いだせずにいた、私の……落ち度なんだ……。どうにも……できない……」
身の内で暴れる衝動を諭すように、俯いたまま一つひとつ言葉を紡ぎ出す。
セシリアはただ、その痛ましい姿を見ているしかなかった。

――――

一同が驚く中で、ひと跨ぎの沈黙が訪れていた。
それを再び、一夏が破る。
「鈴が色々つらいことを経験している間も、俺は呑気にしてるだけで、何にもしてやれなかった。親父さんの店が火の車なのも知らずに、いつも遠慮もせずに飯奢ってもらって、お前が引っ越したのも、ちょっとした家の都合ぐらいにしか思ってなかった。だから今日、お前がどんなことを考えてこの学校に来たか知れて、ホントに良かった」
いつもとは少し違う、穏やかながら真剣な表情で鈴を真っ直ぐに鈴を見る。
その視線に、鈴の心拍数もどんどん上昇していく。
「だ、だから何? そ、それと約束にどう関係するのよ?」
期待と不安が入り混じる中、ついいつものように天邪鬼な言葉が口をついて出る。
「大体、これはあたしの問題であって、一夏が関わる理由なんて…
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