暁 〜小説投稿サイト〜
IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十五話『風光る』
[8/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
う。
それから最初に清から深層同調稼働のコツを教えられて使った日のこと、そこからの荒んだ戦いの日々、甲龍を受理した日のこと、そのテストに現役の中国代表と一戦交えたこと、最後に一夏の報道を知ってIS学園への入学したことを語った。
深層同調稼働の最初の相手は、よりにもよって自分を嫌がらせで追い詰めた女子だった。しかもその日は、それまで成績の振るわなかった鈴の進退をかけた、重要な一戦だったという。
最初はただ弄られるだけだったが、土壇場で深層同調稼働を発動して以降の戦いでの記憶は無く、気付いたときには相手は泡を吹いて倒れていたという。
「思ってみれば、あの日から色々と、おかしくなっていった気がする……」
ふと零れた鈴の言葉に符合するように、鈴はそこからの破竹の快進撃とともに、誰もが恐れ(おのの)く修羅悪鬼として学内で名を馳せ、徐々に孤立していったという。
気がつけば、学友は一人としていなくなっていたと、少女は回想した。
そして今年の二月の初めに、学内での成績が認められて甲龍を受理し、その稼働実験を兼ねて現役代表に訓練をつけてもらったらしい。
それから二ヶ月後の四月の初頭、一夏と修夜がIS学園に入学したというニュースを聞き、清を味方につけて訓練校と競技会を相手に直談判を決行。競技会の方も、ここ数年は暫定的な人材しか遅れていなかったことを考慮し、鈴の要求を通したという。
ちなみに三月には世界に広まっていた情報が、鈴のもとに一月遅れで届いたのは、単純に鈴がニュースのチェックを怠っていただけの話であった。
それを追及されたときの鈴の顔はとてもバツが悪そうになり、呆れて修夜がツッコミを入れ、そのまま口ゲンカに発展しかけたのを拓海が制したのは御愛嬌である。
なんにせよ、鈴がこの一年で随分と数奇な運命を辿った事実は、こうして明かされた。
一同はどこか釈然としない心持ちになりながらも、語られた事実に理解と納得を示した。
それでもなお、修夜には引っ掛かる言葉があった。
「鈴、お前が試合で言った『全部取り戻す』ってのは、どういう意味だ……?」
言われた鈴は俯いて口をつぐむが、しばしの沈黙の後にそっと口を開いた。
「あたしはね、あのお店が、あの家が、あの頃が一番好きだったの……。だから清教官に勧誘されたときに、最後まで断り切れなかった」
鈴のシーツを掴む手に、力がこもっていく。
「お店を手伝うのも、お店を継ぐことになることだって、全然嫌じゃなかった……。ただ、ただみんなと、お父さんとお母さんと、お店に通ってくれる人たちと、楽しく笑っていたかったのに……」
それ以上の言葉を紡ぐことが出来ず、少女は再び沈黙する。
誰も皆、それを決して咎めたりはしなかった。それ以上はもはや、語るに及ばないのだから。
〔まとめると、鈴は単に一夏に会うため――という
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ