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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十五話『風光る』
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だった。
「あの馬鹿、まだまだ問題は山積みだってのに……」
修夜も一夏のこの行動に、また苦笑いする。
よく見れば、一夏の後ろでいつもの面々が立っていた。誰もが、穏やかな笑顔を浮かべていた。
雲の切れ間は大きくなり、いつしか青空が見えていた。
何もかもが、とても眩しく見えていた。
「……じゃあ、行こうか【轟かす者(フリスト)】さんよ。言うべきことも聞きたいことも、今から山ほど待ってるんだからな」
【轟かす者】、それが修夜から鈴に贈った“称号”だった。
「……おい、鈴?」
しかし呼ばれた鈴は、修夜に顔を背けたまま、立ち尽くしていた。
「おい聞いているのか、馬鹿……」
「うっさい」
修夜の言葉をさえぎるように、鈴は短く返事を返した。
「……ちょっと、眩しかっただけなんだから……」
「……は?」
鈴からの突然の言い訳に、修夜は眉を寄せて訊き返す。
「……ちょっと、目に……直射日光が…入っただけなんだからね……!」
まったくもって意味不明な返答だったが、修夜がそれ以上の追及はしなかった。
「わかったよ。先に帰っておくから、またあとでな」
そう言って修夜は、鈴を置いてカタパルトへと飛んで行った。

晴れ間から届く日の光が、雨に濡れたフィールドに降り注ぐ。

そこに残された少女の頬には、柔らかく温かい雨が降っていた。

――――

それから数時間後の夕方ごろ、大事をとって保健室のベッドで休む鈴のもとに、数名ばかりが顔を覗かせていた。
修夜、一夏、白夜の三人が、鈴のベッドの周りを囲んでいた。
拓海、篠ノ之箒、セシリア・オルコットは、コンソールを通じて鈴と話すかたちをとった。
あまり大所帯で押し寄せても、疲れた鈴に負担をかけるだけだと考えたのだ。
千冬、真耶、菜月の教員三名は、今回の試合の報告と事務処理のために、職員室に戻っている。
楊は自国の競技会に競技会に報告に向かったらしいのだが、本音のほうはいつの間にか消えていたという。
「さて、約束通り、全部しゃべってもらうぜ……?」
修夜が挨拶もそこそこに、本題を切り出す。
それに対して鈴も、しばらくの沈黙ののち、一年の空白について語りはじめた。
両親の離婚、清周英からの勧誘、訓練校での地獄の訓練の日々……。
離婚については、白夜が語ったところでほぼ正解であった。
清からの勧誘は本土帰還後すぐの頃で、綿密な下調べと人の弱みを刺激するその巧妙で悪質な口説き方に、皆一様に渋い顔を浮かべた。
そこから訓練校での日々となったのだが、そこは拓海が調べた事実と概ね符合した。
もっとも鈴の場合、現地で親睦を深めた二人の友人が無残に退学していく様を見せられ、さらに同じクラスのトップの少女たちから陰湿な嫌がらせを受けていたこともあり、精神的な負荷は尋常ではなかったとい
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