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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十五話『風光る』
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今回の試合についてですが、本省の方にはしっかりと報告させていただきます。些か目をつむっておきたい内容が多いですが、男性操縦者との貴重な試合データとして、なにより“真性の深層同調稼働とISの成長過程を知る”のデータとして、有用な内容でしたので……〕
楊の言葉を聞いて、鈴は自分の耳を疑った。
「ちょっと、真性って何よ……!?」
少女が知る限り、自分のできる深層同調稼働は、清から教わった自己暗示を利用したものぐらいである。
それ以外で自分が深層同調稼働を発動させたことなど、まるで記憶にないのだ。
「なんだ、気付いてなかったのかよ?」
ますます混乱する鈴に、修夜が再び声をかけてきた。
「俺とお前で最後に差し合ったときに、お前のISの軌道が青い光の尾を引いていたんだぜ?」
初めて聞かされる事実に、鈴は目を白黒させる。

「ガキの頃に世界大会(モンド・グロッソ)で見たから分かるさ。あれこそ正真正銘、人とISが真の意味で一体となったときに発揮できる力、“本物の深層同調稼働”だ」

本物――。
修夜から告げられた言葉が、Aピットルームの反応の謎を解き明かした。
代表候補生といえども、偶然でも深層同調稼働を、この歳で発揮できる人間はまずいない。
この学園で訓練に明け暮れる少女たちでも、早くても二年生の中頃、遅ければ卒業に間に合わない者もいる。
本省にいる自分の先輩候補生すら、血の滲む努力の末に勝ち取ったと語っていた。
その先輩の姿に憧憬を抱き、いつか本物に到達したいと、小さく夢見ていた。
「できたんだ……」
心音が口から漏れて出た。
「まだ信じられないなら、そこの地面見てみろよ」
呆然とする鈴は修夜に促され、彼が指示した方を見てみる。
「えっ……」

そこには大地を深く抉る“二本の龍の爪痕”が、十メートル以上に渡って刻み付けられていた。

「さすがに俺でも、アレをくらってたら病院送りだったよ」
少年は苦笑しながらも、どこか清々しそうな様子だった。
「これ、あたし、が……?」
少女は目の前の光景を信じ切れず、未だに困惑中だ。
その様子を見てか、苦笑のまま修夜は言葉を続ける。
「お前以外に、こんなえげつない攻撃ぶん回せるのがいるかよ?」
いつものケンカ節で答える修夜だが、そこにいつもの嫌味はなかった。
決着の瞬間の水煙は、修夜がこの一撃を紙一重で躱したことで発生していた。地面を叩いた一対の刃は、そのまま強烈な斬撃波を生み出し、地面に二本の線を引いたのだ。
甲龍の双天月牙に、こんな攻撃を繰り出す機能は備わっていない。
だから鈴は、目の前の現象を起こしたのが自分だと言われても、すぐさま理解できなかった。
〔深層同調稼働下では、本来そのISに想定されていない機能や攻撃が発動する事例が、世界でも複数報告されています
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