暁 〜小説投稿サイト〜
IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十四話『雲を裂いて』
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わず後ろに引き下がり、中には勢い余って座席から転げるものまでいた。

小豆洗い。
それは鈴に付いた数々のあだ名の中でも、【最も鈴がムカついた名前】である。
まず小柄なオッサンであること、続いて格好が貧乏くさいこと、そして『小豆』という【わざわざ“小さい豆”と書く物体】をいそいそと洗っていること、ついでに妖怪なので人には見えないこと。
小学六年生の頃、奇しくも子供向けアニメで妖怪ものが放映され、クラス中で妖怪ブームが起きたことがあった。
そのなかで、よくある『クラスメイトを妖怪に例える』という遊びが流行し、鈴にあてがわれた妖怪こそ小豆洗いだった。
それだけならまだしも、鈴にこの名を命名した悪ガキは、鈴を“本物の小豆洗い”として扱ってからかい、「あれ、誰か何か言った気がするけど、誰なのかなぁ〜?」などの悪ふざけを、再三にわたって繰り返したのだ。
いつか飽きると堪えてはみた鈴だったが、それをいいことに悪ガキの悪戯はエスカレート。ついには「小豆洗いの乳首って小豆みたいなのかな〜?」などと言いだし、鈴を数人がかりで鈴をひん剥こうとする最悪の事態に発展。修夜と一夏のみならず、温厚な鈴の父親さえも本気で怒らせる事態となった。
なお悪ガキどもは修夜による“地獄のシバキ・フルコース”に加え、泰山府君(たいざんふくん)と化した鈴の父親によって、監督不行届きと断じられた親や教師ら共々にこってりと絞られたのだった。
のちに町内会において、この一件は暗黙の内に知られることとなり、同時に鈴の父親を決して怒らせてはならいないと周知させた。
白夜をして、「あれを怒らせるのは駄目じゃ」と真顔で言わしめさせたほどである。
この一件以来、鈴にとって“小豆洗い”は一種の禁句となり、出れば最後、どんなに上機嫌だろうと怒りが一気に噴出するようになった。

「そこのクソ馬鹿修夜……、どうやら命が惜しくないみたいね……!?」
怒りが催眠状態を軽くぶっちぎり、完全に怒りで覚醒している鈴。
どこかゆらゆらと揺れているようにも見えるが、それは先ほどの無気力なふらつきと違う、炎天下の陽炎を思わせる闘志に漲るものだ。
「……いいわ、もう時間もないし、……一気にすり潰してやろうじゃないッッ!!!!」
吼えるや否や、赤紫の機影は急発進して修夜に接近する。
とりあえず軽く構えに入る修夜だったが、次の瞬間にその態度を改める。

――急旋回からの龍砲による連射モード。
鈴はその牽制を壁に、渦を巻くようにしてにじり寄っててくる。

のらくらとした雰囲気を払い、修夜は低空から上昇し、弾丸の旋風を踊るように器用に躱す。
鈴もまた、地上から離れて上空へと翔け上がり、縦横無尽に飛び回って何かを狙っている。
《マスター気を付けて、ちょっとさっきまでと動きが違うかも……!?》
「あぁ
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