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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十四話『雲を裂いて』
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デショウ?
……取り戻す……
……家族を……?

――ソウ、他ニモ沢山……。
他にも……お店……一夏の隣……
……あたしの……幸せな……未来……

――ナラ“戦イナサイ”、ソシテ“勝ツ”ノデス。
――タトエソレガ、アナタノ昔ノ思イ入レダッタトシテモ……!
……勝つ……
……何があっても……
……どんな……犠牲……でも……


(そうです、凰鈴音。あなたは勝たなければならない。勝利だけが、あなたを運命という苦輪から解き放つのです……!)
そんな歯の浮くような文字列を、軽快に入力して送っていく。
膨大な情報が入り乱れる大型タブレットの画面を、慣れた手つきと尋常でない速度で操作しつつ、清周英は鈴への工作を進めている。
清にしてみて、この度の過ぎたふざけた試合が続くのに耐えかね、彼はついに自ら手を打った。
複数のサーバーを介して遠回りに甲龍のコアリンクシステムに介入し、甲龍に保険として仕組んでおいた“催眠導入プログラム”を機動させているのだ。
常人はおろか、並のIS技術者でも不可能なことを、清は自分用に改造したタブレットを駆使して平然と敢行する。
当然だが、ばれれば自分の首が飛ぶ。
――ISの試合において、選手とそのサポーター以外が何かしらの工作をおこなった時点で、その試合は無効であり、かつ工作をおこなったものには重大な罰則が下される。
立派な妨害の一種であるからこそ厳罰に処せられる。IS競技のみならず、スポーツ競技全般に共通する観念である。
だがそんなことなどお構いなしに、清は猛然とタブレットを操作する。
(この貴重な試合(サンプル)を、下らない茶番で汚すのは承服しかねます)
自分のプログラムには自身がある、贔屓目なしでも敗北の確率は限りなく低い。
勝てる。
だがその勝利を、こんな下らない三文芝居で茶化されるなど、品性の欠片もない。
そもそも“あの程度の挑発”で精神を揺さぶられているのでは、さらに“先の段階へ移る計画”も延期しなければならない。
(凰、あなたには悪いですが、ここから先は少し眠って頂きます。
目を覚ます頃には、また確実な勝利(データ)が手に入りますからね……)
内心でほくそ笑みながら、悪魔の魔手は電脳空間から少女の精神を侵食していく。

その異変に感づいたのは、電脳の妖精だった。
(この感じ、まさか……?)
自身がプログラムであるがゆえの感覚なのか、シルフィーは鈴の動きと甲龍からの信号に違和感を覚える。
するとしばらくしないうちに、鈴の動きが見る見るふらついていくではないか。
この段階になって、修夜も鈴の異変に気がついた。
「おいどうした鈴、まさかもうバテてんじゃないだろうな?」
「うる……さいっ……!」
だが修夜からしてみれば、それは先刻の深層同調稼働の反動によ
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