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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十四話『雲を裂いて』
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合会場には行けなかった。
だからこの試合で鈴の実力を知り、自分の気持ちに一区切りつけたかった。
勝てばそのときは、自分の実力不足を呪えばいい。もし無様に負けようものなら、そのときには思い切り罵って泣かしてやるとも思った。
でも外崎の目の前には、あの凰鈴音が前代未聞の姿で翻弄されている。自分と何も変わらない、普通の女の子の顔をして……。
自分の見てきたものが、彼女の中で大きく揺らいでいた。
それでも外崎は試合を見続ける。
自分を打ちのめした少女が、何者なのかをもう一度見定めるために。


そしてその列の後方の入口にもまた、一人の観察者が目を光らせていた。
観察者はフィールドの様子をじっと見つめた後、大型のタブレットを取り出し、慣れた手つきで操作をはじめるのだった。


――――

第一アリーナ、フィールド内。

依然として暴露大会を続ける修夜を、鈴が必死に追いまわしていた。
傍目には、猛攻を仕掛ける鈴とそれを華麗にかわす修夜による熱戦だが、飛び交うのが暴露と雑言では緊張感もへったくれもない。
鈴は鬼の形相、修夜は気だるげな無表情、観衆は困惑で豆鉄砲を食らった顔、一部の人間は回想と談笑による笑顔……。
四者四様の心境が、その顔にありありと映っていた。
「おい鈴、いつになったら本気なんだ?」
「黙れっていってんでしょ、この変態っ!!」
「変態は無いだろ、単にお前の失敗談を語ってるだけなんだし」
「それが以外の何があるってんのよ、この馬鹿のバカぁ!!」
呆然とする周囲など見ることなく、相変わらずの調子で猫はネズミに弄ばれている。
猛然とした攻撃だが、どれもが頭に血が上った一手であり、正確さに欠いていた。
息を上げながらも、それでも自分の恥部を吹聴し続ける馬鹿を食い止めようと攻撃を繰り出す。
そんな鈴に、ちょっとした変化が起きていた。
(もう、なんでこんなに瞼が重いのよ……!)
強制的な深層同調稼働(ディープシンクロ・ドライブ)の反動か、試合中にもかかわらず意識がはっきりとしなくなってきているのだ。
目の前で自分をコケにする馬鹿に、一発を見舞いたい。だが眠気とも眩暈ともとれる朦朧とした感覚が邪魔をして、踏み込みが甘くなる。
(一発、一発で良いのに……!)
そう思うそばから、今度は徐々に耳鳴りも起きはじめ、より意識は朦朧としてくる。
勝ちたいのに、あの馬鹿に一発を見舞いたいのに……。

――勝チタイ?
当然の話である。

――勝ッテドウスルノ?
恥をかかせた修夜に土下座で謝らせる。

――他ニハ?
他に……。

――他ニモット大切ナコトガアルデショウ?
大切なこと……。

――アナタニハ“モット大事ナコト”ガアッタハズ。
大事なこと……

――勝ッテ……“取リ戻ス”ン
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