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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十三話『颯(はやて)』
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…、全部ぜんぶ……全部っ、ぜんぶあたしが取り戻すっ!!」
己の意地を大声にして、少女は自らの体にその言霊を染み渡らせる。
意地の言霊が、少女の意識に活力を蘇らせる。
痛みも眩暈も振り払い、四肢に力を漲らせ、瞳に再び火を灯す。
顔を上げ、背筋を伸ばし、討つべき相手を鋭く睨み、武器を取る手に力を込める。
倒す。
ただそれでいい。
それで自分は取り戻せる。
あの日あの時に零れ落ちていった、何もかもすべて――


「……で?」


自身の目標のために燃え滾る鈴に対し、修夜は――――とても暇そうな顔をしていた。

「え……」
「だから、それからどうする気だ。さっきからこっちは置いてけぼりなんですけど?」
凄まじく熱意を持った鈴に対し、修夜の方はまるで要らぬ長話を聞かされて辟易しているように見える。
「あんた……、人が真剣にやってるときに、どういう態度なのよぉ!!」
当然、至極真っ当に怒る鈴に対し、
「いやさ、なんか取り戻したいのは分かるけど、話の前後が全然見えてないから」
修夜の方は、いつになく酷い冷め方で受け答えする。
いつもこのぐらいの勢いで行くと倍ぐらい返してくる相手が、まるで先ほどまでとは別人と思えるぐらいに、適当でのらくらとした生返事しか返してこない。
姿勢としては正しいのは自分のはずなのだが、あまりの温度差に自分の方が浮いているのでは、とさえ感じてしまう。
その態度に誰よりも、彼の相棒が一番間抜けな顔で困惑していた。
「まぁ、冗談は置いといて……」
「じょ……」
息を()きながらあっさりと悪ふざけを認める修夜に、段々と鈴の中で別のイライラが溜まりはじめる。
「何を御大層に意気込んでるかは知らないけど、正直、全然様になってないから」
「なん……ですって……!?」
「そもそもお前、“悲劇のヒロイン”ってガラじゃないし。どっちかって言うと、猛獣?」
「だだ……誰が猛獣よ、誰がぁ?!」
「お前」
「〜〜〜〜ッッッ!!」
真面目に返答すると思いきや、またものらくらと話しはじめる修夜に、ますます鈴の怒りはヒートアップしていく。
それと重なるように、シェルター内の観客席に徐々に困惑とどよめきが広がりはじめる。
もっとも息を呑むような緊迫の差し合いから一転、はじまったのは奇妙な口ゲンカなのだから、当たり前の話なのだが。
「……いや、猛獣は言い過ぎた。すまん」
「……っ」
「ポメラニアンぐらいだな、あの犬種めっちゃ気が強いし、よく吠えるし、うん」
「ふっ……ざけんなあぁぁぁあっ!!」
「見た目が可愛いだけ、ブルドックより数倍マシだろ」
「どっちも犬っころじゃないのっ?!」
「お前、犬好きなんだからいいだろう。六年生のときに、給食のパンで近所の捨て犬を餌付けして悦に入ってたし」

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