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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十三話『颯(はやて)』
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そんなの普通なら、クビにされても可笑しくないんじゃ……!?」
「……残った二十パーセントの訓練生は、本省でもトップレベルの逸材として活躍してます。何より彼は弁が立つうえに、交渉術においては比肩する人材がいませんから……」
「実績で負債を帳消しにし、責任は詭弁で煙に巻いている、ということか……」
「事故や故障を起こした少女たちのほとんどが、肉体や精神はかなり過度な疲労していました。ですが肝心なことについては、『清教官の指導を活かせなかった自分のせい』と、どれも判を押したような回答で……」
どんな悪評だろうと、大きな結果が伴えばそれは『周囲の嫉妬』の一言で消えてしまう。そこに教え子の弁護が加われば、もはや疑念などただの言い掛かりにしかならない。
「ただ清指導教官から何を教わったかを訊くと、全員に共通していたものがありました」
「共通?」
「……【強くなれるおまじない】、というものです」
「お……おまじない……ですか?」
千冬も真耶も、少し反応に困った。
それまでキャリア志向のインテリといった風に聞こえた清の印象が、急に茶目っ気を帯びてきたのだ。
まるで人物像が掴めない。
「その……おまじない……というのは……?」
「……憶えていませんでした」
「どういうことだ?」
「故障や事故の前は覚えていたらしいのですが、彼が見舞いに来た後から、よく思い出せないそうなんです」
そこまで言うと、楊は眉間にしわを寄せて嘆息した。
千冬も真耶も、まるで昔話や説話にある“狐狸(こり)の怪”を聞かされているようで、楊と同様に釈然としない気分に襲われた。
「それでも清教官は、彼女のたちに何か“好からぬこと”を吹き込んだ。そう考えないと、辻褄が合わない事だらけなんです」
楊は疑念に駆られながらも、それだけははっきりと声に出した。
千冬も真耶も、その声にこもる力を確かに感じ取る。
(おまじない、か……。鈴の様子からするに、あれはおそらく“深層同調稼働”で間違いないだろう)
横目でモニターに視線を戻しつつ、元世界最強は鈴の変貌の本質を、薄々ながら見抜いていた。
同時に疑念も生じていた。
(楊管理官の話と、あの子がその領域に踏み入るのに要する時間に差があり過ぎる。たった一年で意図的な深層同調(ディープシンクロ)を成功させるには……)
自身の持つISの知識を総動員するも、それに見合った回答は得られない。
束の間の沈黙ののち、
(管理官の言うように、やはり清というその男が何か仕掛けたか……?)
疑念の矛先は、やはり話題の人物へと向けられることになった。

――――

第一アリーナ観客席。

観客席の入口で、口に手を当てながら必死に笑いを噛み殺す人物がいた。
(いいですよ、いいです、素晴らしいっ!!)
中国のIS訓練学校の指導
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