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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十二話『電(いなずま)』
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かったのう)
説明にこそ交えなかったが、白夜はこの交流で鈴の一夏への想いも理解した。そしてそれをネタに、恥ずかしがる彼女をからかって遊んでもいたらしい。相変わらずな仁である。
とにもかくにも、鈴は白夜との交流を得て自分なりに考え抜き、両親の関係修復のために小さな努力を重ねていった。
二人が忙しいときには、下手くそながらに家事を手伝い、以前は億劫だった出前や配膳を自ら買って出たりもした。
少女は少しでも二人に、精神的なゆとりを持ってもらおうと、柄にもなく懸命に店を手伝った。
――可愛い看板娘がいる中華屋がある。
いつしか、そんな噂もたちはじめていた。
それは結果的に店の売り上げを伸ばし、両親のケンカの回数をも減らしていった。
かつての平穏な凰家の姿は、そうして取り戻されていくように見えた。

〔結果的に、これが一番の致命打になりおったがな〕

愛娘の張りきる姿に、両親は非情の決断を下した。
〔『自分の道楽にお前を巻き込みたくない』。それが父親からの返答じゃった〕
鈴の父親が娘に対して望んだもの、それは【何にも縛られない将来】だった。
ゆえに父親は、娘の将来が何かに縛られて身動きできなくなることを、何よりも避けてきた。
このまま店の切り盛りを任せ続ければ、きっと娘は何の疑問もなく自分の店を継ごうとする。だがそれは、本来娘が歩めたはずの無数の可能性を潰す、残酷な選択だとも考えていた。
本省からの勧誘を断り続けてきたのも、同様の理由だった。同時にこの父親は、友人伝手に本省の異様なIS良英才教育の実態を耳にし、決して踏み込ませてはならないとも考えたのだ。
加えて店の借金も、鈴の将来のための貯蓄に手を出さざるを得ない段階まで達していた。鈴の頑張りで経営が持ち直した頃には、すでに返済期限が差し迫り、焼け石に水でしかなかったのだ。
〔机に突っ伏して、泣きながら謝られたらしい〕
それが二月の末のことだったと、白夜は告げた。
なお離婚に至ったのも、愛する妻に借金を負わせることを嫌った父親の判断だったらしい。
――苦労も後ろ指も、自分だけでいい。
鈴の話を聞いて諸事を伺いにいった白夜は、彼女の父親からそう聞かされた。
同時にケンカの理由が、政府の要請を受理することで発生する莫大な奨励金に絡んでいたことも、このとき告白された。
母親の方が、夫の店を潰すまいと考えた、苦肉の策だったという。
ただ聞くと身勝手な方法に思えるが、子は親に尽くすのが道理の儒教社会たる中国では、ごく自然に発生する思考の一つである。
こうして凰一家は、互いの思いのすれ違いの末に店を閉め、それぞれの地に去っていった。

〔以上が、わしが鈴と係わって見届けた、事の顛末の一部始終じゃ〕

白夜は知っていることを、すべて話しきった。
モニターを見ていた者も
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