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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十二話『電(いなずま)』
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った。
思えばこの大盤振る舞いが、店の経営を陰でひっ迫させていない訳はなかった。
〔あの仁も、商売人としては人が好すぎたんじゃよ〕
白夜の言葉にも、どこか憂いのような感情が入り交じる。
(くそぅ……)
一夏は内心で後悔し、腹を立てた。
その怒りは誰でもなく、鈴の父親の厚意に何の疑念も持たず、図々しくも能天気にタダ飯をご馳走に上がっていた、あの日の自分自身に向けたものだった。
どうにもならない思いが、険しい表情として現れてくる。
〔お前が悔いたところで、何も戻りはせんよ。納得済みの決断じゃろうて〕
白夜に諭される一夏だが、まだ釈然としないらしい。
〔そもそもあの一帯は、駅前再開発の影響で随分と様変わりしたからのう〕
ISが及ぼした影響は、何も世界の価値観だけではない。
修夜や一夏の育った町は、IS学園から鉄道網を使えば三十分ほどで到達できる位置にある。
学園の創業以降、周囲は競うように再開発に乗り出し、学園の周辺地域は軽いバブル経済の様相を呈していった。
修夜と一夏の育った町もまた、学園直通のモノレールのある『学園海峡大橋駅』への特別快速が組まれたことで、それまで穏やかだった街並みは駅前を中心に小都会へと変貌している。
中でも数年前に出来た駅前の大型デパートとショッピングモールは、近在の商業エリアでも有数の売り上げを誇る地区となった。
〔食い物屋のほうも、随分と駅前に集中したからのう。常連や昔馴染み以外は、ほとんど駅前に客を取られてしもうたらしい〕
――よくある話だ。
白夜はそっけなく言い切った。
〔わしはあの子が引っ越す半月前まで、あの子から両親の仲直りを相談されていたんじゃよ〕
白夜が鈴から聞いて曰く、駅前地区が賑わいを見せて以降、二人は店の経営と中国政府からの勧誘を巡ってよく口論になっていたという。
それを耳にしていた鈴は、仲睦まじいかつての二人に戻って欲しいと切に願い、地元で知恵者としても評判だった白夜に相談を持ちかけたのだ。
〔話を聞かされときには驚いたわい。何せ馬鹿弟子とケンカしているか、一夏を追いかけているかばかりの我がまま娘が、目に涙を溜めながら二親の仲を案じておったのだからな〕
どこか愛おしげに、白夜は当時の様子を振り返っていた。
最初の相談は、彼女が中学二年生に上がってしばらくした頃だった。
それまで大した交流もなかった両者だったが、白夜の営む鍼灸診療所が暇になる時間帯に、普段は顔を見せることのない鈴がひょっこりと顔を出したらしい。
最初はぎこちない態度だったが、それも顔を合わせて言葉を交わすうちに、いつしか柔らかくなっていったという。
それは普段から弟子を通じて聞いていた、強情で鼻っ柱の強いおてんば娘とは違う、いたって普通の年頃の少女であった。
(特に一夏について訊いたときには、面白
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