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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十二話『電(いなずま)』
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に一人の逸材なのだ。
(あの鈴が、まさかそれだけの“天才”だったとはな……)
千冬もこれには、心の内で静かに感心するしかなかった。
同じ代表候補生のセシリアがAランクだが、彼女の場合は数年来の努力でAランクまで向上させた部分が大きい、いわゆる“秀才”である。
対する鈴の場合、セシリアほどの努力が出来た時間がない。それにもかかわらず、一年という短期で国家代表候補生になったのだから、彼女の現状の強さは、努力以上に才能が占める割合が大きいと考えるべきだろう。
中国側が執拗な交渉を以ってして欲しがった理由も、今戦っている鈴の強さが表している。
「それにしても、離婚したとはいえ、どうして凰さんはお店をやめてしまったんでしょう……」
またも真耶が、小声で唐突な疑問を投げかけてくる。
「真耶……」
眉間にしわを寄せながら、千冬は呆れ気味に後輩を一瞥する。
「あっ、すす…すみません。思わず口に出てしまいました……」
ところが、何気ないこの一言から、楊はまた別の事実を述べはじめた。

「閉店理由は至って単純です、借金で店の運営が回らなくなったからです」

――――

「……え?」
観客席のモニターの正面に位置する座席。
いまはシェルターが雨避けとなって降りているため、シェルターの天井全面が、克明に試合を映す大画面となっている。
その座席で、織斑一夏は間抜けな声を上げていた。
〔『え』もなにもありはせんよ、あの店は借金の(かた)になってしもうたのだからな〕
一夏にとって、布仏本音のコンソールのモニター越しに白夜が語った事実は、まさに青天の霹靂(へきれき)だった。
「だって、あんなに繁盛してたじゃないか……!」
一夏がよく目にしていた光景は、昼時になると満席になって賑わう店内の風景だった。
土日には常連客であふれ、平日でも夕方から夜にかけては半分以上の座席が埋まっていた。
〔お前さんらが見かける時間帯は、な……〕
白夜に一言に、反論の言葉を探していた一夏は思わず押し黙った。
先ほど鈴の両親が離婚していたという、衝撃の事実を知ったばかりである。
加えて、今度は自分たちの知らないところで、幼馴染の家が借金苦に喘いでいたという。
「だったら、なんで俺や修夜とかにタダ飯食わせるとか……!」
悔む思いで独語しながらも、その理由を一夏は誰より理解していた。
鈴の父親という人物は、度外れて優しく大らかな人物であった。
常連にサービスといって、一品料理を無料で付けるのは当たり前にやった。
苦学生に30分の皿洗いを対価にラーメン定食を出したり、一夏や修夜のように近所の年頃の者に無料で料理をご馳走するなど、一銭の得にもならないことを惜しむことなくやってみせた。ときに足りない代金に目をつぶり、払える分だけを受け取るなんてこともや
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