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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十二話『電(いなずま)』
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ーの一言により少し重さが増たようで、部屋の中をなんともいえない沈黙が漂いはじめた。
「実際どうなんですか、白夜先生?」
寸の間の沈黙を破ったのは、拓海の一言だった。
拓海自身、鈴の急激な人格の変化には色々と疑念が尽きずにいた。そして彼もまた、鈴が白夜に可愛がられ、彼女が何かの相談を白夜に持ちかけていたことは知っていた。
もちろん拓海も、鈴について調べ得る範囲は洗いざらい調べている。
それでもまだ、この英才を納得させるには足りないものがあった。
「僕が思うに、白夜先生が一番答えに近い場所にいるはずなんです。それこそ、鈴と僕らが別れるまでのあいだに起きた出来事の、その一部始終を知っている。……僕はそう踏んでいます」
試合の様子はコンソールが記録するに任せ、拓海は白夜の方に向き直り、彼女を真っ直ぐに見据えていた。
「……やれ、さすがにお前は聡いのう」
観念したといった風に、白夜は微笑を浮かべる。
それから白夜は、一同が未だ辿り着けていない深層へ切り込む、衝撃の一言を口にした。

「あの子の親たちはな、もう夫婦(めおと)ではないのじゃよ」

――――

「凰夫妻が……離婚……!?」
ほぼ時を同じくして、Aモニタールームでも鈴の隠された事実が、楊によって明かされていた。
珍しく千冬は、心底から驚いていた。
何にといえば、当時は近所でも名の通ったオシドリ夫婦であった凰夫妻が、自分たちと別れた日には夫婦の籍を抜いていたことにだ。
「えぇ、凰候補生が本省(ほんしょう)に帰国したのが三月の中頃で、本省の担当局には三月冒頭に離婚成立の通知を出した旨を、記録として残しています」
楊も管理官として、候補生である鈴の素性を、本省(中国本土)のIS協会からの通知書以外に、独自の調査を敢行して詳細を洗い出していた。
それを引き出す気になったのは、単に千冬の眼力に気押されただけではなく、千冬の方も拓海に掛け合って、修夜・一夏・セシリアの戦闘記録を融通させると鎌をかけたからだ。
「その反応から察するに、やはり凰夫妻にそういう影は見えなかったのですね」
楊の問いかけに、千冬は思わず押し黙る。
楊のいう通り、千冬から見ても、二人の仲にひびや隙間風など微塵も感じなかった。
千冬自身、夫妻との交流はさほど多くはない。だがその少ない交わりの中で、彼女が凰夫妻から感じ取ったものは、記憶の片隅で鮮やかに残っていた。
それほど千冬には夫妻の存在感は強く、また“女性として”憧れを抱く光景でもあった。
「……原因は?」
声を殺し気味に、千冬は楊に問いただす。
「担当局曰く『性格の不一致』、まぁよくある“ケンカ別れ”とのことです」
楊の方は、問いに対して淡々と、事務的に応じていた。
(ますます理解できない……)
千冬がそんな疑念を持つほどに、夫
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