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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十二話『電(いなずま)』
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世の中には、ときとして理不尽で残酷なことが起きる。
たとえば、昨日まで元気だった友人が事故で亡くなった、大切にしていたものを紛失してしまった、取っておいたデザートを勝手に食べられた、贔屓にしていたお店が突然に潰れた、片想い相手が街角で不細工な恋人と幸せそうにしていた、等々……。
それはいつ、どこで、誰に降りかかるかも分からない。
人はこうしたことを“不幸”といい、一絡(ひとから)げにまとめる。
まとめられた負の現象は、ときにお互いに強い引力を発揮し、群れをなす。
群れをなした不幸は、大きな災厄となって、人の人生を狂わせもする。

凰鈴音もまた、理不尽な災厄に巻かれた少女だった。

――――

第一アリーナ、Bモニタールーム。

真剣勝負を演じるフィールドとは対照的に、こちらにはやや緩んだ空気が漂っていた。
「修夜のヤツ、とりあえず鍛練は怠っておらんようじゃのう」
そう言いながら、弟子の拵えた重箱入りの手弁当と試合を(さかな)に、銀髪の美女はのんびりと酒を味わっていた。
「当人の話じゃ、毎朝早い時間からきっちり鍛えているみたいですよ」
モニターが並ぶ部屋の機関部で、眼鏡の少年はコンソールを操作しつつ、美女の言葉に答える。
その美女の横では、銀髪の小柄な美少女が、重箱の中身を黙々と食していた。
それを監視員である女性教師は、試合内容に驚きつつも、憮然とした表情で酒の席を広げる美女を見張っている。
「お前さんも一杯どうじゃ?」
「要りませんっ、勤務中です!」
勧められた酒をきっぱりと断る菜月の様子を、白夜は「固いヤツよのう」といいながらからかって楽しんでいた。
(やれやれ、榊原先生もすっかり白夜先生のおもちゃだな)
二人の様子を横目で見守りつつ、拓海は黙々と作業を続ける。
Bモニタールームは、大体こんな調子で試合の動向を見守っていた。
「白夜先生としてはどうです、この試合?」
拓海は何気なく、白夜に対して質問を投げかけた。
「まあ、悪くはない。酒の肴には丁度良いしのう」
相変わらずな返答をしつつ、白夜は大杯(おおさかずき)を傾けて酒をあおる。
そして酒が減るたびに、菜月は眉間のしわを深くして白夜を睨んでいた。
「……あのお姉ちゃん、苦しそう」
ここで急に口を開いたのが、重箱弁当をいそいそと食していたくーだった。
突然の一言に、一同は思わずくーの方に顔を向けた。
「“苦しそう”って、どういうことなの……?」
菜月は恐るおそるくーにその真意を尋ねてみる。
「……自分で自分を追い詰めてる、だから自由に動けてないです……」
出てきたのは、まるで意図の見えない回答だった。
どうやら彼女の眼は、余人(よじん)には感じ取れないものを画面越しに捉えているらしい。
どこか和やかだった雰囲気も、く
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