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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十一話『雨』
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東西、雨天下の戦いには、往々にして“魔物が棲む”とされてきた。
人間も生物である以上、天候による小さな変調に、無意識の内に影響されているものである。気温の低下、湿度の上昇、空気の変容、気圧の変化など、そうした環境は体を通じて精神に及び、心のありように振れていく。
〔……というか、僕個人としては、このまま試合を続行してもらいたいんだよ〕
「どういう、ことですか……?」
ここで拓海が珍しく、自発的に自分の願望を口にした。対してセシリアが疑問を呈する。
〔もちろん、雨天時のデータを取りたいのもあるけど、それ以上に【賭けている】んだよ〕
「賭ける……?」
堅実そうな拓海自身から出た意外な言葉に、箒もその意味を訊く。
「賭けるって、しゅうやんが勝ってりんりんが素直になること?」
本音もまた、今までの話から推察して拓海の答えを読んでみる。
〔修夜については当然だけど、それ以上に――〕
拓海が最も信頼する修夜を差し置いて、それ以上の可能性を見出したもの、それが……

〔試してみたいんだ、この“雨の魔法”っていうのを〕

拓海は雨が降ると想定した時点で、この先の展開を見据える構えをしていた。
修夜と鈴の戦いが、期待通りの展開になる可能性を、拓海はあまり高くないと見積もっていた。鈴の現状の性格では、溜めているであろうものすべて吐き出させるには、いささか強情すぎると踏んだのだ。
より強固にするための要素は、本来ならば一夏に担わせるのが適当なのだろうが、残念ながら一対一の戦いである以上、無茶である。
ならば他の要素と考えたとき、最年少主任は雨という天候の持つ“魔力”に賭ようと決断した。
〔非科学的だろうけど、天気が人に及ぼす影響は意外と大きいからね。
 修夜の全力と雨の魔法、これが僕の導き出した最善策だよ〕
拓海の眼には、いつになく強い輝きが宿っていた。

――――

第一アリーナ中空。
大気が湿度を上げていく中で、二機のISの戦いの熱も上昇し続けていた。
鈴の最初の一発から既に5分以上が経過し、互いのシールドバリアーを掠めながらの地味な削り合いが続いている。
出来るだけ無駄弾を撃たないように気を配る修夜だが、鈴の方は追いかける修夜を牽制するために、とにかく衝撃エネルギーの弾丸をばら撒き続けてくる。
(くそっ、鈴のヤツ、こっちの弾切れを待ってやがるな……!)
龍砲をはじめ、空間圧縮砲の最大の利点は“弾切れ”と呼べる状況がないことである。
空間圧縮砲は、空間の壁を歪める負荷で生まれるエネルギーから弾丸を生成し、さらにその歪みが元に戻るエネルギーで弾丸を発射する武装である。機体エネルギーの残量と、砲本体の酷使による熱暴走さえ気を配れば、弾数の制限はないに等しいのだ。
反面、一発撃ち終わると、次を撃つための砲本体の冷却や、
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