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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十一話『雨』
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海はこの試合、どうなったらいいと思う?」
空中でいたちごっこを演じる二人を見ながら、箒は不意に拓海に問うてみた。
〔……エアリオルの開発者としては、もちろん修夜に勝って欲しい。長年の相棒としてもね〕
ISの開発者として、修夜の最も古い縁者として、至極当然の回答である。
〔だけどそれ以上に――〕
そんな前置きののち、
〔修夜がどこまで鈴から“真実”を引き出すことが出来るか、一番の問題はそこだよ〕
はっきりとそう言いきった。
「真実……?」
一夏が訝しげな顔で拓海に訊き返す。

〔実を言うと、中国という国のIS事情は、異常な競争率と国家教導による方針下で、かなり荒んだ状態にあるらしいんだよ〕

一同に戦慄が走った。
〔簡単に説明すると、より優秀なIS操縦者を発掘するために、幼少期から英才教育を施したり、国民全体にIS適性検査を義務付けたり、養成機関を施設してより優秀なエリート操縦者を育成したり……。とくにかく国全体で、ISに対する執着が極めて強いらしい〕
ISによる女尊男卑の時代とはいえ、女性もISに乗るか否かは当人の自由に任されている。
それはISの運用を定めた「アラスカ条約」にも明文化されており、『権力者が政治的な力を背景にIS適性検査の義務化や、国際IS委員会の承認した養成施設以外でのISに関する教練は、基本的に規約違反として厳罰に処される』となっている。
〔僕の方で掴んだ情報だと、どうやら鈴も中国国内での異様な空気の中で、相当厳しい競争を勝ち抜いてきたみたいなんだ。そもそも彼女のIS適性は文句なしの『A判定』だ、そんな逸材を国が放っておくわけがないだろうからね……〕
拓海の語る生々しい事実に、四人はただ愕然としていた。
同時に事実の異常性も、否応(いやおう)なしに感じ取ることが出来た。
国中がIS一色に染まり、才能あるものは操縦者となることを暗黙の内に強いられ、その上でさらにふるいに掛けられていく。そこにあるのは貪欲なまでの野心と生存本能であり、中国という国がISに傾ける執着心そのものであった。
〔ただ、ね……〕
ここで拓海の発する声に変化が起きる。
〔それにしては、あの鈴の頑なさはどこかおかしい気がするんだ。あくまで、僕個人の“直感”なんだけど……〕
拓海もまた、鈴とは古い付き合いであり、鈴がどんな少女なのかはよく知っている。
だからこそ、単に本国の異常な空気にさらされただけで、一年足らずで人格に歪みが出るほど、少女が弱くはないことも承知している。
「つまり……りんりんは、何か私たちに【隠しごと】してる、ってこと?」
〔まあ、端的に言ってしまえばね〕
尋ねる本音と頷く拓海の後ろで、一夏たちは新たの事実の登場に静かに驚いた。
「ようするに、修夜が凰と戦うことで、凰の内側に溜めているもの吐き出させ
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