暁 〜小説投稿サイト〜
IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十一話『雨』
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エネルギーの充填に時間が掛かるという欠点もある。だが格闘戦の得意な鈴にとってそれは大した隙にならず、また彼女の機体には短距離加速《クイック・ブースト》という、機動力を底上げする機能が追加されている。
よって鈴と正面から下手に撃ち合うと、最悪の場合は一発も掠らずに、こちらだけが弾切れにされてしまうのだ。
《マスター、「ピアスクロー」の残弾六十パーセントが切ったよ……!》
「……ったく鈴のヤツ、思ったより上手く避けてやがるな」
突撃用推進機があるお陰で鈴に食らいついてはいるが、先の接近戦で無暗に懐に入れるのは危険と判断されてか、逃げに徹せられてしまった感がある。
(正しい判断だけど……、何か気に食わないやり方だな)
無茶な話しだというのは、内心で愚痴っている修夜も分かっている。それでも修夜にとって、鈴の性格から連想する戦い方は、今の戦い方とは少しかけ離れていた。
修夜の知る鈴という少女は、何事も正面から挑んでいく強気な性格をしている。それこそ先ほどの競り合いのように、ガンガン押していく戦い方のほうが“らしい”のである。
ところが競り合いから銃撃戦に移ると、今度は一向にこちらに突っ込んでくる気配がない。それどころか攻めようと追えば、立ちどころに逃げてしまうだ。
(少なくとも無人機戦じゃ、こんな及び腰な戦い方はしてなかったけどな)
無人機相手の鈴は、龍砲で気を引きながら突撃し、格闘戦に持ち込むスタイルを多用していた。修夜としては、むしろそっちの戦いをしてくるものと考えていたのだ。
(来いよ鈴、その程度じゃないだろ……!)
空中で熱を上げていく“弾丸の舞踏”とは裏腹に、修夜の闘志は徐々に熱を失い、別のものが次第に首をもたげてくる。
(もっといつもみたいに、正面からかかってこいよ!)
それが傍らでサポートするシルフィーには、なんとなく察しが付いていた。
(……なんだか、マスターがイライラしてる)
修夜と長く触れ合ってきたシルフィーには、自分の主人の機嫌ぐらいは聞かずともある程度の理解が出来た。それが修夜の鈴に対する“無意識のこだわり”であることも、ぼんやりと察しが付いている。
(この前もその前も、今も。なんだかんだ言って心配してるんだよね、あの子のこと)
サポートに集中すべきなのは分かっているが、電子の妖精は自分の主人の“人の善さ”を、再確認せずにはいられなかった。
(……まさか、この前みたいにならないよね?)
一抹の不安がよぎった、そのときだった。


――ぽつっ


エアリオルのシールドバリアーに、弾丸とは違うものが掠めるのを、シルフィーは感知する。
(今の、って……)
龍砲からの砲撃を掻い潜る修夜のサポートと並列して、電子の妖精はハイパーセンサーの一部分を第一アリーナ上空に向ける。
(間違いない、来る――!
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