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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十一話『雨』
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ある日、少女は約束した。
「あなたのためのご飯を作りたい」と。
少女は想いを寄せる少年の、屈託ない了承の笑みに心をときめかせた。
彼女の心にかかる不安の雲を散らす、太陽のような笑顔だった。

そして少女は力という翼を得て、笑顔に逢うために彼の地から飛び立った。
その姿はまるで、苦難の旅路を一羽で飛ぶ鳥のよう。
ただひたすらに運命という嵐の中を突き進み、止まり木に止まって羽を休めることさえ惜しんで、かつての日の当たる“あの場所”を目指して翼を動かす小さな渡り鳥。
降りしきる雨と、吹き荒ぶ風の中を、渡り鳥はただがむしゃらに飛び続ける。


もはやどこを飛んでいるのかさえ、分からなくなっているとしても……


――――

第一アリーナ中空。
正面から武器を手にとって激突した真行寺修夜と凰鈴音は、その一合から戦い方を接近戦に発展させていた。
修夜の操る実体振動剣(ストライク・ファング)と、鈴の操る青龍刀・双天牙月(そうてんがげつ)が、絶え間なくぶつかり合いながら鋭い音をアリーナ中に響かせる。
(さすがに代表候補は、伊達や酔狂じゃねえな……!)
二合、三合、四合と、ぶつかっては離れてを繰り返し、幾重にも剣閃を重ねていく二人。
時代劇のチャンバラシーンでも、こんなに激しく切り結んだりはしない。
それが成立するのは、修夜と鈴の奇しくも似通った精神構造が成せる、先読みの一致による奇妙な凌ぎ合いだからだ。
純然な生身での剣術なら、修夜にすぐさま軍配が上がるだろう。
だがこれはISによる戦いであり、その意味では鈴に一日の長がある。
まして、短期で猛烈な数の戦いを勝ち抜いてきたであろう彼女の腕前は、修夜の感じるところで自分と限りなく五分に近かった。
もう七度目の競り合いを交わし、また間合いを取って離れる両者。
(それにしても、荒っぽい太刀捌きしてやがんな、鈴のヤツ……)
古今東西、芸や学とは常に“かたちから入る”ものである。武術も“型”という動きの基本を仕込んで、はじめてまともな戦い方が出来るようになる。
修夜は白夜の鬼のシゴキで完璧な型を仕込まれているが、おそらく鈴は基本的な型もそこそこで実践を積んできたのだろう。一見して完成しているように見えても、修夜にはところどころの余計な力みや、ぎこちなさが見えていた。
そんな未完成の剣で達人級の修夜に迫っているのだから、鈴の武の才もかなりのものである。
(粗いけど変な無駄は少ないし、剣閃も鋭い。戦いの中で鍛えた“実戦剣術”ってところか…!)
粗く未完成だが、繰り出される一振り一振りは獲物を捕らえんとする獣の爪のように、必中の意思を持って的確に放たれている。
何より今の鈴は、殺意にも似た鬼気に満ち満ちている。その緊張感が、技の粗さを補う棘付きの防壁として、また敏感なセン
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