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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十話『泣きだしそうな空の下で』
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可侵の領域。
そこで苦しむ一夏に対して、何の言葉もかけられない自分が悔しい。

  少し一夏と幼なじみになったのが長いからって
   一夏のこと全部分かってる気になってんじゃないわよ

部屋替え説得事件で鈴に言われた言葉が、箒から三人の輪に踏み込む勇気を奪っていた。
(修夜には勝って欲しい、一夏にも元気になって欲しい。でも……)
それが単純な願いではないのが、分かってしまった。
単純に勝つだけでは、どちらにも必ずしこりが残るだろう。それは一夏や修夜が望む結末とは、恐らく違うもののはずだ。
(……また、何も出来ない)
目の前で大切な人が苦しんでいるのに、そこに立ち入れない歯がゆさ。
自分だけが部外者に思えてしまう、やりきれない感覚。割って入れたとしても、鈴が目を釣り上げて詰め寄ってくるのは想定するに易い。
(ここでも私は、何も出来ないまま……)
先日の無人機との戦いでも、箒は自分の戦い方に満足ができなかった。
途中、謎のパワーアップがあって戦力的な価値は上がったものの、終わってみれば地味な活躍しかできず、戦友たちに貢献できたという達成感がいま一つ湧かずにいた。
箒はそんな自分が、情けなく思えて仕方なかった。
そして今も、同じ思いに苦しんでいる。
「……箒さん?」
「え……、あっ、すまない、セシリア……」
一人で重苦しい空気に沈んでいた箒に、セシリアは声をかける。
「ご気分の方がすぐれないようですが……?」
「いや、大丈夫だ。少し考え事を、していただけだから……」
そういって笑いかける箒だが、肝心の笑顔はどことなくぎこちない。
(あぁ、また私は……)
ただでさえ滅入っている気分が、セシリアに余計な心配をかけさせたという思うで加速する。
「……大丈夫ではございませんね」
ため息交じりに、セシリアがそう言い放つ。
「い…いや、私は大丈夫だ……! 本当に変な気遣いは無用だから……」
これ以上、周りの負担になるのは御免だ。これ以上の迷惑を仲間にかけては、本当に呆れられてしまう。必死に箒はセシリアに対して、自分は平静だと訴えかける。
「そうやって“自分は大丈夫です”と言う人は、往々にして大丈夫ではありませんわ。特に“以前のわたくし”という人間などは……」
セシリアの一言に、箒は反論のための言葉を失くしてしまった。
今でこそ淑女の見本のようなセシリアだが、ついひと月前までは鼻もちならないほどに高飛車なお嬢様であり、まして男という生き物を頭から見下していた。
その裏には、名家たるオルコット一門の命運を背負い、代表候補生になるべくがむしゃらに努力し続けてきたがゆえの矜持があった。同時にその矜持は、独りよがりの焦りによって曲げられ、彼女の人格に傲慢さを与えていた。
「何かお悩みのようですが、そうやってお独りで抱え
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