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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十話『泣きだしそうな空の下で』
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の色に支配されていく。
呼応するように、空も一層重たい色へと変化しはじめる。
フィールド全体を、窒息しそうなほどの緊迫感が支配しようとしていた。

『それでは両者、試合を開始してください』

「「!」」

試合開始のブザーとともに、二人は武器を呼び出し(コール)してその手に握り、弾かれたように激突した。

――――

AカタパルトとBカタパルトのあいだにある、アリーナのメインモニターを正面から望める観客席で、いつものメンバーは二人の試合が始まるのを待っていた。
「今日は晴れだと聞いていたが……」
篠ノ之箒は灰色を濃くしていく空を見上げながら、少し不安げな表情を浮かべていた。
「この様子でしたら、おそらくは降るでしょうねぇ……」
箒の言葉に応じてセシリア・オルコットも、空模様からこれから先のことを予測した。
その二人を余所に、試合に出る人間よりもよっぽど緊張した顔の一夏が、落ち着きのない様子で試合の開始を待っている。
なにぶん、幼馴染たちのガチゲンカである。一夏にとって、この試合は親兄弟同士のいがみ合いを見せられることとイコールであり、気分の良いものではなかった。
――最悪、鈴と修夜が修復不可能なほど、悪い関係になってしまうのではないか。
そんな不安が心の岸辺に、波のように寄せては返していた。
「おりむー、なんか顔色悪いよ?」
一夏のそばで布仏本音が、その顔を覗き込んで気遣う。
「……あ、悪ぃのほほんさん。ただの、考え事だ」
思っていた以上に不安が顔に出ていたことに、一夏は本音からの指摘で気がつく。
「大丈夫ですか、一夏さん?」
「あ、うん。平気へーき! 元気なのが俺の取り柄だし」
一夏の隠し切れていない動揺を察してか、セシリアも声をかける。それを一夏はいつもの調子で笑ってみせて、大丈夫だとアピールする。
その様子を、箒は複雑な気持ちで見ていた。
一夏が元気が無いのは、箒もよく分かっていた。その原因も理由も、すべて承知している。
その上で、箒の心の内には(もや)がかかっていた。
(なんでこんなときに……)
修夜、一夏、鈴。この三人は、自分よりもお互いに過ごした時間が長かった。
ゆえに三人が生む独特の縁の中に、箒はいま一歩、踏み込めずに立ち尽している。
(言えない、“大丈夫だ”なんて軽々しいことなんて……)
木刀を振りまわしていた頃の自分なら、雰囲気も考えずに一夏に喝を入れて、修夜の勝利を信じさせようとしただろう。
しかし今は、分かってしまうのだ。今から目の前で起きる戦いが、一夏にとっては“人間関係の分岐点”であるということが。
単純な勝ち負けじゃない、三人の築き上げてきた宝物が、今日この場で壊れるか否かの、ここがその瀬戸際であることも。
歯がゆい。
自分には手出しのできない、不
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