暁 〜小説投稿サイト〜
IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十話『泣きだしそうな空の下で』
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席の話だ。
学園内のアリーナの中で、第一・第二アリーナは解放式であり、雨をよけるための開閉式の天井が存在しない。
ゆえに試合中に雨に降られると、その程度によっては中止を検討しなくてならないのだ。
「どうする主任、一応は外部フィールドである程度の雨避けは可能だが……?」
この千冬の提案に対し、拓海は――

「よほどの豪雨にならない限り、大丈夫だと思いますよ」

その気遣いが“無粋”とでも言いたげに、穏やかながら素っ気なく返答した。
「……それもそうか。まあ二人には、雨天時の戦闘を経験するいい機会かもしれんな」
千冬もまた、拓海の言わんとするところを汲み取ったのか、それ以上は言わなかった。

雨が降る。
その雨がこの試合に、何をもたらすのだろうか。

――――

アリーナの低空、そのど真ん中。
少年と少女は、試合の始まる瞬間を緊張とともに待ち続けていた。
昨日の予報では五月晴れと謳っていたのだが、今の空は泣き出しそうな顔をしていた。
(さすがは海の上だな、天気予報も当てになりゃしねぇ……)
科学技術が進歩した現在でも、山と海の機嫌だけはお伺いを立てづらいものらしく、こと洋上の人工島であるIS学園にとって、世間の天気予報は希望的観測の足しぐらいにしかなっていない。
その空の顔と同様に、決して晴れているとは言えない表情の少女が一人。
「……よう、鈴」
名前を呼ばれた愛らしい小柄な少女は、整った顔立ちに似つかわしくない二本の線を眉間に引き、修夜をじっと見つめていた。
「準備は万全か、こっちはいつでもイケるぜ?」
コアネットワークの開放回線(オープン・チャンネル)を介して語りかける修夜だが、鈴の方はだんまりを決め込んで返答がない。
「なぁ、思えばこうやって“ガチのケンカ”をやるのは、今日が初めてだよな……」
だが修夜の方も、そんなことはお構いなしに鈴に語りかけ続ける。
「やれジロジロ見ていただの、給食のおかずの余りの取り合いだの、ポテチの食べた枚数だの、字の上手い下手だの、性格がどうだの……。よくもまぁ、あれだけ罵り合ったもんだよ」
懐かしむように、修夜は一言ごとにその光景を脳裏に甦らせていた。
ケンカ仲とはいっても、男と女。修夜は無暗に女性に手を上げるのを()しとしないし、鈴も他人を無神経に叩けるほど図々しくはない。
ゆえに二人のケンカは、常に口先での勝負であり、それでも収まらなければ、代わりに徒競争やカードゲームなど勝負事を催して決着をつけていた。

だから二人にとって、これが正真正銘の、【初めてのぶつかり合い】になる。

「鈴、お前が向こうで一体何を見てきて、どうやって過ごしたかは分からない」
穏やかだった修夜の語気に、力強さと鋭さが宿る。
「だから、鈴。俺はお前に勝って、お前の口
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