暁 〜小説投稿サイト〜
IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十話『泣きだしそうな空の下で』
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確認もせずに……!?」
その非常識なまでのフリーダムっぷりに、菜月は思わず目を白黒させる。
すると菜月は意を決したように、白夜に対して抗議しようと口を開こうとした。

「親も縁者もおらんよ、そやつは天涯孤独じゃ。だから拾った」

しかしそれを読んでいたかのように、白夜が先んじて言葉を放った。
あっけらかんと言ってみせた白夜とは逆に、部屋の雰囲気は一気に凍りつく。
一方で素性を明かされたくーは、白夜と同様に一切の動揺は見られない。
「詳しくは、まぁ修夜が一戦終えた後にでも話すかの。そのために連れてきたわけじゃし」
そう言うと杯の中身を一気にあおり、中身を干してしまった。
(ずいぶんとまた、急な話だな……)
拓海にとっては、こうした白夜の唐突な言動は今さらな出来事であり、それ自体にさしたる驚きはない。だがそこに見知らぬ少女がいて、あまつさえ“拾ってきた”というのは、どこか腑に落ちない。
拓海にとっては、彼女は自分の親同然の存在であり、自分もくーという少女も身の上は似ている。だから白夜が彼女の身の上を知り、何かしらの気まぐれが重なったのなら、それはそれである。
それでも、たったそれだけでそんな大それた行動を起こすほど、夜都衣白夜という仁は前後不覚なお人好しではない。
まして無関係な場に連れ歩くような、猫可愛がりなどしない。
(これはひょっとして……)
奔放な養親のやることには、何かしらオチがある。
長年の経験から、拓海はなんとなく“オチの落とし先”がぼんやりと見えてしまった。

『試合開始まで残り一分です。ルールを説明いたします』

そこに試合開始前の場内アナウンスが、モニター越しの音声から聞こえてくる。
一同がその声に引き付けられ、一様にモニターの方を振り返った。
(とうとうはじまるな、鈴と修夜の【初めての本気のケンカ】が……)
去来した気持ちはIS技術者としてではなく、相沢拓海“個人”としての感慨であった。

――ピピピッ

不意にモニター前のコンソールから、通信を告げるアラームが鳴った。
「私だ、相沢主任」
応じてみれば、発信者は千冬だった。
「どうしたんですが、織斑先生?」
少し眉間にしわを寄せる千冬に対して、いつもの柔らかい調子で応じる拓海。
「天候のことで、少しな……」
いつもの凛々しくも厳しい顔で千冬が振ってきたのは、天気の話だった。
一見、厳しい表情には似つかわしくないような話題だが、実際はそんな呑気な内容でもない。
「正午前からの雲の動きからして、十中八九“降る”でしょうね」
先読みするように、拓海が会話を先に進める。
雨が降る。
学園内にあるアリーナはどれも全天候対応であり、観客席に冷暖房が完備された最新式である。
多少の雨などどうにでもなるが、それはあくまで観客
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