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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第三十話『泣きだしそうな空の下で』
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み合う状況は、決して楽しいものではない。まして数年来の幼馴染、しかもケンカの絶えない二人が、いつになく重い雰囲気で睨みあっているとなれば、その動揺も大きかった。
「いまさらそれを掘り起こさなくても」と二人を宥める一夏だったが、そこで修夜が唐突に“諾”と返したから、一夏はより困惑した。
いつもなら、率先して鈴からの厄介事を避けたがる修夜が、この日このときに限っては、あっさりと彼女からの厄介事を引き受けたのだ。
「約束は約束、こっちもお前に用がある」と、やる気まで見せて。
こうなると、一夏が泣き付く先は拓海しかいない。
神様・仏様・拓海様と必死で助力を請うべく、頼みの綱に泣きそうな顔を向けて訴えかける。
一夏の様子を見て、嘆息しながらも拓海様は、まずは宥めすかすように二人に割って入る。
いつもの穏やかな口ぶりで、二人の意思の確認をおこなう拓海に、一夏はどうにかなるかと期待を膨らませた。
だがそれは、見当違いな希望だった。

「もしやるっていうのなら、せめて週末まで待った方がいいかもしれないよ」

まったく止めようとしなかった。
それどころか日取りや、対決をおこなうに当たっての諸問題とその解決法などを、次々と提示。とどめに会場の予約と交渉など、生徒ではややこしい手続きを拓海自身が買って出たものだから、一夏はもうベッドで力無くうなだれるしかなかった。
こうして、修夜と鈴の対決は土曜の午後からに決まり、詳細を鈴に伝えるために鈴はメールアドレスを拓海と交換した。そして約束通り、拓海は千冬という強力なコネを利用して、第一アリーナの借用と面倒な手続きの処理に成功し、予定通りに今日の対決にこぎ着けさせたのだった。

――――

その拓海はと言うと、Bモニタールームで試合の記録とデータ測定の準備に勤しんでいた。
修夜の飛び出したカタパルトをあとにした拓海は、エアリオルと二人目の代表候補生との戦いを記録すべく、あらかじめこの部屋の使用許可を取っていたのだ。
もっとも最初の仕事は、修夜のエアリオルのフィッティングと調整なので、鈴が飛び出したAカタパルトと逆の位置にいるわけだが。
部屋の中には、弟子の試合を今や遅しと待ちわびる白夜の姿もあった。
「せっかくですから、観客席で観戦してきたらどうです?」
コンソールを叩きつつ、特等席での見物を勧める拓海に、白夜は「人気のない方が気楽だ」という理由で断った。
断ったはいいが、モニタールームの中央にある机に堂々と重箱の弁当を広げ、オマケに昼間から酒まで持ち込んでいた。
これでも『飲食厳禁』の旨とそのポスターの存在を拓海は説明してるのだが、説明を受けた方は「ばれなければ大丈夫だろう」の気楽な返事で、まったく意に介していなかった。
なお弁当の中身はと言うと、定番の骨付きチキンと出汁巻き卵にはじま
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