暁 〜小説投稿サイト〜
IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第二章『凰鈴音』
第二十話『夜風の非常階段にて』
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なり何するのよ、馬鹿!!」
それを聞いた修夜は、呆れながらもどこかほっとした気持ちになっていた。
「まだ服も乾かしてないんだろ、とりあえずそれ羽織っておけよ」
その水をかぶせたのはアンタよと、そう反論しようとした鈴だったが、修夜の顔を見ていて、何故かそれを口に出せずに黙ってしまった。

夜風が吹く。
非常階段には影が二つ。
一人の少女は、バスタオルを肩から羽織って階段に座り、もう一人の少年は、少女の目の前で踊り場の手すりにもたれて立っていた。
「ほらよ」
不意に修夜が、鈴に向けて小さな器を差し出してきた。
水筒のフタ。中身は薄暗くて分からないが、その液体は香ばしい香りとともに湯気を立てていた。
鈴は何も言わず、そっとそれを口に含んでみる。
(ミルクティーだ……)
コップ代わりのフタの中身が分かり、鈴はつられて二くち目を流し込む。
少し、熱い。でも一くち含むたびに、体が温まっていくのが分かった。
――悔しいけど、美味しい。
少しだけ、鈴の心から刺々しさが消えていた。
「落ち着いたか……?」
修夜はそっと、鈴の様子を伺ってみる。
「うん……」
鈴も修夜に小さく返事を返し、コップの中身を飲み切る。
「ほら、貸せ」
それを見た修夜は、鈴からコップを取り上げて二杯目を注ぎ、また彼女に渡す。
「……ありが…と……」
欲しいとは言っていない。
でも、物足りない感じはあった。
修夜も鈴も、お互いにケンカばかりする仲だが、それゆえに自然と相手の調子を見たり、習慣を先読みするクセが付いていた。
だから修夜は、鈴が一杯だけでは足りていないだろうと感じ取り、鈴も修夜が二杯目を注いだことに、変な遠慮はしなかった。
いがみ合うから分かり合える。
強く思いを寄せるから分からない、そんな鈴と一夏の関係とは、まったくの真逆だ。
「荷物は部屋まで届けておいたぞ。鍵は右隣の部屋のヤツに預けて、閉めておいたからな」
また修夜が素っ気なく言い放つ。
「あ……」
言われて鈴は、ボストンバッグをあの場に置いたまま、ここまで飛び出したことを思い出した。
鈴の反応を見て、修夜はため息をまたこぼす。
それを見て鈴は、悔しそうな、また泣きそうな、そんな顔をした。
「またいじめにでも来たワケ……?」
精一杯の嫌味と反発の意を込めて、鈴は修夜に棘のある言葉で牽制する。
もともと自分がこうしてしょげているのは、あの場で一夏には聞かれたくないことを、目の前の馬鹿にばらされたことが原因だ。決して自分は、あそこでこの馬鹿に負けた訳じゃない……。
鈴の頭の中で、そんな考えがグルグルと回りはじめる。
「あのなぁ、いじめるも何も、お前の身から出た錆だろ。一夏に聞かれて嫌だったら、最初からやるなってぇの……」
本日いったい何度目か、もう数えようのない
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