二十二 無明の闇
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踵を返す彼の視線の先には巨大な椅子があった。
瓦解した床を物ともせず聳え立つ椅子。身が埋もれるほどだったそれは、今の神農にちょうどよい大きさであった。
「なるほど…。究極肉体を持つ者が座るべき大きさであったか……」
己の身に宿る凄まじい力に恍惚としながら、神農は腰を下ろす。ナルトの【表蓮華】により消費してしまったチャクラを、香燐のおかげで取り戻した彼は、気を持ち直したように高圧的な態度で告げた。
「まさに王たる者が座りし玉座」
優越感に浸りつつ、神農は二人を見下した。まるで跪けとばかりの佇まい。
神農に利用された香燐は益々顔を険しくさせた。だがここで一縷の憎悪の念でも抱けば、再び闇のチャクラにされてしまう事が目に見えているので、懸命に耐える。肩を震わせる香燐の顔をちらりと覗いてから、ナルトは神農に向き合った。
刹那、ゴトリという音が神農の耳に入る。
硬質な造りを誇る椅子の三分の一がごっそり無くなっていた。身を乗り出して神農が後ろを振り向けば、椅子の角ばった部分が断面を向けている。曲線を描いた切断面は、確かにこの硬い椅子のものである。神農の顔から一瞬血の気が引いた。
高々と聳え立っていた椅子の右上から左下にかけて。そこが見事な切り口を残して斜めにざっくりと斬り取られていた。
腰掛けている者には一切傷つけず、ナルトが鋼糸で斬り落としたのだ。
暫し瞠目していた神農が、やがて怒りで顔色を変える。椅子と共に自分を攻撃する事も可能だったはずなのに、そうしなかった。何時でも倒せるという余裕が感じられ、彼はナルトを睨んだ。青筋を立てた顳?(こめかみ)がぴくぴくと動いている。
「……わしの玉座を傷つけた償い――その身で味わえ」
声に苛立ちを滲ませながら、神農は宣戦布告する。対してナルトはただ静かな眼差しを神農に据えていた。その瞳には何の感情も見当たらない。
――――――――闘いはまだ、序盤戦が終了したばかり。
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