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渦巻く滄海 紅き空 【上】
二十二 無明の闇
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青褪めた。ナルトはまだ目覚めない。

神農が殊更ゆっくりと歩み始めた。こつこつと床を踏み鳴らす足音が緑を基調とした室内で大きく鳴り響く。香燐は恐怖で身体が竦んでしまった。息苦しいほどの緊張で声すらも咽喉の奥に痞えて出てこない。
だが全く予期していなかった事が、香燐の眼前で突然起こった。







神農の背後でぼうんっと白煙が巻き上がる。金の髪を翻して神農に躍りかかる少年の姿。同時に香燐の傍で倒れ伏していたナルトが丸太に変わった。
(【変わり身】か…ッ!?)と内心叫ぶ香燐。彼女が驚愕しているのに対し、神農は待ち兼ねたとばかりに舌舐めずりした。

「舐められたモノよ!!」
背中から至近距離で殴りかかられたにも拘らず、その攻撃を予測していた神農がすっと身体をずらす。そして、勢いあまって踏鞴を踏む相手の背中を思い切り蹴りつけた。矢のように吹き飛ぶナルト。壁に激突するのを防ごうと、香燐が慌てて彼の身体を受け止める。

「ふん。貴様がメスに変化している事など想定済みだ」
メスによって会話が駄々洩れだったという苦渋を味わった神農は、ナルトの忠告を覚えていた。子どもとは言え、油断ならぬガキだと無自覚に一目置いていたのである。
「自分の得物が何処を刺したかぐらい把握しておくべきだよ」という一言から、メスに目を光らせていた彼は、闇のチャクラを宿した際の覇気で弾き飛ばしたナルトは偽物だと考えていた。そちらに注意を引きつけ、必ず死角から攻撃してくる。故に己のすぐ傍まで滑ってきたメスに注目していたのだ。

にぃいと口を歪め、神農は香燐に抱き抱えられているナルトを見遣る。覇気よりも【肉体活性の術】における究極肉体の一撃のほうがダメージは遙かに大きい。暫くは動くのも困難であろう。
首をコキと鳴らす。そして一気に踏み込んで、神農は額がくっつくほどに相手へ急接近した。
驚愕する顔。目にも留まらぬ速さで近づいた神農は、香燐の首目掛けて腕を伸ばす。

だが動けないはずのナルトが二人の間に割り込んだ。反応出来ない彼女を押し退ける。

標的が入れ替わったのを逆に好都合と見て、神農は小柄なその身を腕一本で持ち上げた。香燐の身代りになったナルトの細い首は、大木の如し太い腕に締め付けられている。

「わしに助言したのが裏目に出たな。同じ手が二度も通用すると思っていたのか」
脳へ巡る血を堰き止めようか、それともへし折ってやろうか…などと残忍な言葉を愉快げに囁く神農。白い首に指がぐぎゅりと食い込む。



嬉々とした表情を浮かべる神農に向かって、風前の灯であるはずのナルトは、あろうことか笑ってみせた。
「……残念」








ぼうんっと手から煙がすり抜ける。空を掴む己の拳を神農は愕然と見つめた。
「同じ手じゃな
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