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渦巻く滄海 紅き空 【上】
二十 王の都の砦
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ギスギス野郎……」
眼鏡のブリッジを押し上げ、そう呟いた彼女は、傍にいる者の同意を得るため「なあ?」と肩越しに振り返った。だが声を掛けようとした相手の姿が見えず、慌てふためく。
「だ、ダーリン!?」
「しぃ〜…ここだよ」
もはや呼び方の訂正を諦めたナルトが、ひょっこり顔を出した。彼の顔を視界に入れ安堵すると同時に、香燐は瞳を瞬かせる。

再びナルトの姿が忽然と消えたのだ。

壁の中から彼のチャクラを感じ取り、香燐は壁面を睨みつけた。先ほどの忍び達をやり過ごす際に身を隠した壁の右方。この部分だけ、止め処なく壁を覆っている木の根がぽっかり無かった。それを不審に思い、彼女は益々目を凝らす。
すると、よく見なければ気づかないだろう繋ぎ目がその壁だけに入っていた。
うっすらとした線の切れ目を指でなぞる。途端、壁が音も無く開き、人一人やっと通れるほどの入り口が現れた。ナルトは暗がりに身を寄せた時に偶然、隠し扉のようなモノを見つけたのだ。
壁と一体化している扉を恐る恐る潜る香燐。隠し扉の中に入った彼女の後ろで、入口が静かに閉まる。

香燐の視線の先に、書棚の前に佇むナルトの姿があった。





隠し扉の中はさながら図書室のようだった。

壁という壁一面に添え付けられている書棚。床に設置された大型書架。どちらも本や巻物がぎっしり詰められている。
狭い部屋を埋め尽くすように積まれた書物は、何れも均一した大きさや形ではない。しかしながらどれもかなりの年代物であるらしいと、読書に興味のない香燐の眼にも見て取れた。
書棚から巻物の一つを手に取ったナルトが、ぱらぱらと流し読みする。
「やはりアレは手許に置いてるか…」
苛立たしげに彼はそう吐き捨てた。そんなナルトの様子を珍しがりながら、香燐は書棚に手を伸ばす。
「なんだ、これ?」
ちらっと中身を覗く。そしてすぐさま彼女はパタンと本を閉じた。よく読まなかったが、どうも人体についての内容だったのは確かである。
「げげっ!ここにある奴ほとんどが、医療関係じゃねえか」
書棚を少々物色した香燐がうんざりした声を上げた。棚に並ぶ書物の大半の内容が、医療忍術に関して。今現在ナルトが目を通している資料も、人体にある点穴の位置についてだった。
「早く出ようぜ。こんなとこ」
香燐に促され、ナルトは本を棚に戻す。そしていくつか目星をつけた書物を最後に一瞥し、彼は香燐に続いて隠し扉から外へ出た。
再度閉じた入り口は、もはやただの壁と化している。この隠し扉の場所を忘れぬよう頭に位置を叩き込む。

そして武装した忍び達が向かった先とは別方向に、再び二人は駆け出した。










石壁に備え付けられた蛍光灯がぼんやり光る。淡い色合いの照明の中、白が一瞬掠めていった。
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