十九 廃墟
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む彼の躯は無傷だ。
しゅうるりと炎の中で鋼糸が踊った。
ナルトの無事な姿に安堵した香燐が、ここぞとばかりに抱きついた。同じく胸を撫で下ろした君麻呂だが、彼は慌てて香燐をナルトから引き離す。
「いい加減にしろ!ナルト様に馴れ馴れしいっ!!」
「テメエ…さっきからウチの邪魔ばっかしやがるな!ギスギスしやがってっ!!カルシウム足りてないんじゃねえか!?」
「余計なお世話だ。それに、カルシウム濃度なら調整している」
いつもの調子を取り戻し乱暴な口調で怒鳴る香燐と、彼女を睨みながらも律儀に答える君麻呂。
君麻呂の血継限界は、骨芽細胞や破骨細胞を自在に操り、カルシウム濃度さえも統制し骨を形成する力。即ち彼の返答は間違ってはいないのだが、そんな事など露も知らない香燐は「はあ!?」と怪訝な声を上げた。
二人の言い争いをよそに、ナルトは腰を屈めた。彼を囲むように、多くのクナイが地に突き刺さっている。石畳に刺さっているそれらは何れも鋭利な先端を失っていた。
ナルトはクナイを全て、鋼糸で撃ち落としたのである。
「一体何処から……ッ!?」
香燐との口論を強引に断ち切って、すぐさま君麻呂は周囲を窺った。注意深く身構える彼の前で、片膝立てたナルトがある一点を見つめている。彼の視線の先を追った君麻呂と香燐は、はっと息を呑んだ。
鋼糸ほどではないが、細い糸が階段上にぴんと張ってある。目を凝らさないと気づかないだろうソレを、事も無げにナルトは指で弾いた。
「罠(トラップ)だよ」
突如として雫が鼻先に滴下する。思わず頭上を見上げた三人の視界に、ひとつの雲が映った。燃え盛る村に影を落としながら近づいている暗雲。黒雲は村から立ち上る黒煙と違い、正に天の恵みと言えた。
妙に薄っぺらい印象を与える焼け野原。村を包み込んでいた火の勢いはスコールのおかげで弱まり、鎮火の後には空気を燻る煙だけが焦土を這っていた。
遠くに連なるジャングルは蒼茫たる光景のままである。それが逆に、この荒廃した村を余計寂寞としたものにさせていた。
「人っ子一人いないってのは変、だよな」
焦げた地面を足で弄びながら、香燐がぽつりと呟く。砂利の擦れる音というより炭を砕く音が、焼け爛れた荒野でむなしく響いた。
無残な崩壊を残す村。大半の建物が全壊し、水浸しとなった路地を冷たい空気が吹き抜ける。
廃墟と化したこの地を探索したものの、ナルト達は誰にも出会わなかった。倒壊建家に生存者が閉じ込められているのではないかと、目を皿にして隈なく捜したが、死体すら出て来ない。
「村人の亡骸が無いという事は、どこかに避難しているということでしょうか?」
君麻呂の尤もな意見に、ナルトは答えを返さなかった。腕組みをしたまま黙りこくってい
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