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渦巻く滄海 紅き空 【上】
十九 廃墟
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は居場所が無い、という事だ。身を置く場所の無い辛さは……君麻呂、他でもない君が知っているはずだろ?」
決まりが悪そうに視線を逸らす君麻呂と、哀惜に駆られ沈痛な面持ちでうつむく香燐を、ナルトは交互に見つめた。

居場所が無いという一言は、香燐の心にずしんと響く。地に映る炎の影がゆらゆらと揺れるたびに、彼女の視界から色が無くなっていった。絶望で、灰色に染まる目前の光景。
だが目の前が真っ暗になる前に、一筋の光明が香燐の視界に射し込んだ。

「俺は居場所なんて柄じゃない。でも、拠り所にはなれると思うよ」

ナルトの柔らかな声に、香燐はハッと瞳を開ける。顔を上げると、微笑するナルトが目に入った。
彼の微笑みひとつで、香燐は自身の身体が急に軽くなったような気がした。己に架せられた孤独という重荷。それを何気ない言葉だけで軽くした本人は、再び君麻呂に頼んでいる。
「香燐?」
ぼんやりとナルトを見つめていた香燐は、急に顔を彼に覗き込まれてボッと頬を赤くした。気遣うナルトから赤い顔を隠すように、彼女は立ち上がる。

今の香燐にとっては村を焼尽させる炎より、胸を焦がす火焔のほうが熱く感じた。







不意にナルトは石造りの階段を見上げる。着々と階段を登ってゆく彼に、香燐と共に待つ事を渋々承諾した君麻呂が注意を呼び掛けた。
君麻呂の心配をよそに、一番上の段まで登り切ったナルトの傍で、熱で変形した家が地響きを立てる。途端煙を棚引かせながら、家を支える柱がナルト目掛けて倒れ掛かってきた。
弾かれるようにソレを避けると、柱は音を立てて石畳にぶつかる。
ぶつかった衝撃で柱は粉々になった。辺り一面に飛び散った木片がナルトの爪先にこつんと触れる。ふと足下を見下ろしたナルトの瞳に、ぽつんと打ち捨てられたかのように落ちている煤汚れた人形が映った。

体の中心を貫かれているその人形。貫通しているのは紛れも無く、忍びの得物であるクナイだ。
秘かに眉を顰め、ナルトは鋭い瞳で村を取り囲む木々を見据えた。炎に煽られ、彼の金の髪が乾いた空気の中で靡く。



刹那、乾燥した空気を、何かが裂いた。




燃え盛る炎の中、雨霰と降り注ぐ――数多のクナイ。
矢のように勢いよく飛来してくるそれらの的は、ナルトだ。





君麻呂と香燐が目を見張る。彼らの目前で、突然ナルトがクナイの雨に襲われたのだ。
声を荒げ、二人は必死に名を呼んだ。そしてすぐさま転がるように石段を駆け上る。
「ナルト様!?」「ダーリン!?」
立ち込める煙に咽ながらも彼らは叫んだ。不安と緊張で昂る二人の精神を、気軽な一声が一瞬で鎮める。

「ダーリンって呼び方、止めてほしいんだけど……」
猛火を背にしたナルトが口元に苦笑を湛えていた。静かに佇
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