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皇太子殿下はご機嫌ななめ
第48話 「嵐の前触れ」
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「腹立ち紛れに、有人惑星を攻撃するかも……しれないだろう?」

 私がそう言うとフォーク君は首を振る。
 そして簡潔に纏めたレポートを提示しつつ、さらに説明を始めたのだ。
 ロボス君を含めた幕僚達で必死に考えた末の、作戦らしい。

「それは有り得ません。相手はあの皇太子です。そのような事を認めるはずもない。今の帝国軍の指揮官は、かつての門閥貴族ではないのです。皇太子に忠誠を誓う平民達です」

 だからこそ、同盟がさっさと戦場から立ち去ってしまえば、否が応にも帝国に帰還するしかない。ましてや有人惑星を占領して、それを維持するには八個艦隊では少なすぎる。
 それが分からぬほど、あの皇太子も帝国軍も愚かではないだろう。
 だからこそ彼らにも、選べる選択肢は少ない。

「それを逆手に取るのです。軍も政治の一環。あの皇太子ならば、今回の作戦の意味を見抜くでしょう」
「なるほど、政治的な意味合いを持たせるのか……。その上で同盟市民に今回の作戦の意味を伝える。あのような条件など同盟は飲めない事をアピールする」

 政治的な意味合いに徹する。同盟は一戦をも辞さない覚悟を持っている。
 そう帝国に突きつける。
 それしか六個艦隊を無傷で残す事はできないというのだな。

「その通りです」
「可能なのか?」

 私がそう問うと、フォーク君は力強く頷いた。
 六個艦隊を出動させながらも、戦わずに引く。その意味を皇太子に考えさせる。
 問題を出す側と解く側。
 どちらが主導権を持っているのかは、明らかだ。
 思わず喉が鳴った。
 やれる。十分成功可能な作戦だ。

「今回の作戦は軍に一任する。やってくれたまえ」
「了解いたしました」

 フォーク君が敬礼をして、部屋から立ち去った。

「はぁ〜」

 私は椅子に背を預け、深々と座り込んでしまった。
 一時はどうなる事かと思ったが、なんとか首の皮一枚で、同盟は生き残ったようだ。
 シトレ君にロボス君。
 二人とも中々優秀な部下を持っているようだな。
 大丈夫。大丈夫だ。
 同盟は生き残れる。帝国に併合されてたまるものか。
 なんとしても生かせてみせる。
 これからはトリューニヒトなんぞにしてやられないように、軍と連絡を密にしなければならない。

 ■ノイエ・サンスーシ フリードリヒ四世■

 うぬぬ。なんじゃこの仕事の量は。
 ルードヴィヒから回ってきた仕事だが、やたら多いわ。
 女官達がにこにこ笑いながら、書類を差し出してくる。これを予にこなせと言うか?
 そうなのか?
 ルードヴィヒ!!

「がぁ〜っでむ!!」

 許せん。
 許せんぞ。
 ルードヴィヒ。
 予は悠々自適な生活をしたいのじゃ。

「できないんですか
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