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暗黒の時代
第1話
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くる。フォーリシアは両手を上げたまま硬直していた。

「おー、適当に撃った割にはストライクもいいところだな。いや、1人残っているから違うか」
「違いねぇ」「次でスペアだろ?」「さっさとやっちまえよブラッド」

 数人が遺体を蹴る鈍い音が聞こえる。言いたい放題に振舞う様は野盗そのもので、軍人としての誇りは微塵にも感じられなかった。

「よし、そのままこっちを向くんだ。ゆっくりな」

 ブラッドと言われたリーダー格の男がフォーリシアに指示をする。彼女は何の戸惑いも無く、そのまま彼の方へ向き直った。自動小銃、軽機関銃、ロケット砲で武装した7人で、いずれも乾燥地帯用の茶色をベースにした迷彩パターンの軍服を着ており、ヘルメットは数人が被っているだけで後は頭を露出していた。最後尾には少女と同い年くらいの少年が目の前の惨状に口に手を当て、眉をしかめていた。
 残りの男達は品定めするかのように彼女の顔、身体に好奇の視線を注ぐ。

「まだ年端もいかねぇガキだが・・・いい身体してやがる・・・」

 ブラッドがフォーリシアのホルスターからハンドガンを奪い取り、後方へ投げ捨てると、ライトアーマー越しに栄(は)える少女の輪郭線を厭(いや)らしい目付きで追った。本人は無表情でただ一点を見据えて立っている。

「お願いがあるの」
「ん、命乞いか?輪姦(まわ)させてくれるなら考えてやらんでもないぜ」

 下卑た笑みを浮かべ、ブラッドが腰を突き出して「行為」のポーズを取った。彼の隊員も色めき立ち、歓声を上げる。そんな彼等を余所に、彼女は深く息を吸い込み、目蓋を長く閉じて見開いた。
 ―そこに絶望はなく、ただ一つの希望もなく。ただ、紫色の燐光が二つ、静かに燃えていた。

「祈りなさい。もっとも、貴方達に神が居ればの話だけど」

 凛とした声色が戦場に響き、フォーリシアはこの世のあらゆる理から解放された。目の前のブラッドが7.62ミリ口径のアサルトライフルを構えるよりも疾く、彼女は腰からコンバットナイフを抜き取り、ライフルを目掛けて振り上げる。鋼鉄製のパーツがスポンジのように容易く切断され、スプリングやボルトといった物が地面へ吸い込まれていく。彼が事態を把握するまで1コンマ数秒。彼女は振り上げたナイフを頭上にそのまま放つとその勢いで身体を捻りながら太股の側面部に収納された投擲用の刃幅の狭いスローナイフを取り出すと、渾身の力を込めてそれを前方に放つ。一本は強化繊維プラスチック製のフルヘルメットを貫通させただけでは物足りず物理法則を無視したかのように標的を押し倒した。もう一本は無防備な兵士の喉元に突き刺さり彼を跪かせる。少女は未だにうろたえるブラッドの脇を走り抜け、両膝を地面に落とした兵士の喉に刺さったままのナイフに手を掛けて横に薙ぐと大量の鮮血が噴き
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