20years ago ”Beginning of the world”
#01
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《大変遷》。去る百年ほど前に起こった、現実世界唯一の《流転》。世界の全てが更新され、《奇跡の無い世界》は《奇跡のある世界》になった。
人々の知らないところで、異形の者たちと、それに立ち向かう英雄たちの戦いが、何度も、何度も繰り返された。
だが、今や、そんな時代も終わりを告げた。異形の者たちの足跡は途絶え、戦いから解放された英雄たちは普通の人間としての生活を送っている。
そして今、世界の関心は、今までの『奇跡』とは別種の『奇跡』へと向けられている――――。
***
2X14年。時代の主流は、《拡張仮想現実》……略して《AVR》となっていた。一切のデバイスを必要としない、《現実》と《仮想》の融合。
何もない場所に信号機が出現する。真っ白い壁に中世風の煉瓦模様が浮き出る。触れられる。嗅覚・味覚を含めるすべての五感に、もはや現実と仮想の継ぎ目は、ほとんどなくなっていた。
その中にあって、いまだに根強い人気を泊するのが《VRゲーム》である。《Benefit》と呼ばれる、補聴器程度の大きさのVR機器が、脳と直接交信し、仮想の五感を与える。《仮想世界へのダイブ》だ。
いくら仮想現実化が進んでいるとは言え、ゲーム能力を現実世界に持ち込むことは不可能であった。現実世界では体感することの叶わない様々な出来事が、《VRゲーム》では可能であった。
そもそも、この《VRゲーム》が世界で最初の大規模なVR世界の形成だったのだ。VRゲームがなければ、AVRが進むのはもっと遅かっただろう。
全世界で進むAVR化に伴って、この《VRゲーム》も普及した。多くのゲーム作成用フリーパッケージが配信され、世界中で十万近い数のVRゲームが開発されているという。
その中で、特に人気のあるジャンルが、《VRMMO》である。《ヴァーチャルリアリティ・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン》。一つの世界に、無数のプレイヤーがログインして遊ぶこのゲームは、VRゲームが世界に広がる先駆けともなったジャンルである。《大変遷》によってもたらされた、かつてよりも十年ほど進んだ科学技術が、本来ならば当時から見て五十年ほど先にならなければ実現しないVR技術をもたらしたのが、四十年ほど前。黎明期よりVRMMOは多大な人気を博し、登場から四十年以上たった今でなお、その勢いは収まることを知らない。
VRMMOの大躍進はまだまだ続くだろう。
***
「……と、言うわけだ」
「ふーん……すごいのね、VRゲームって」
久積幸春は、テーブルを挟んだ向こう側に座る恋人、七尾|優
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