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SR004〜ジ・アドバンス〜
20years ago ”Beginning of the world”
#01
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ムネクサスにサーバーを置くのは「恐れ多い」とされ、新規VRゲームは、多くのネクサスサーバーを経由し、様々な批判や感想を受け付けてから、完成度の高いものとなってこの《ザ・ユグドラシル》にやって来るのだ。ほかの下位ネクサスで人気の出たVRゲームの多くは、ネット上などで噂される。しかし、『SR004』はそれらを一切伴わずにいきなり出現したのだ。さてはVRゲーム界のイロハを知らない初心者が、興味本位でVRゲームを作成したか、と、早速批判を稼業とする暇人たちがダイブした。

 ――――そしてそのゲーム完成度に、瞬く間に心を奪われた。

 サイバーファンタジー調の世界観設定や、無数の《職業(クラス)》と《スキル》の、無限大の組み合わせによる星の数ほどの戦略。一体一体に超高度なAIを与えられたNPC達。そして何より、数々のVRMMOを凌駕する、圧倒的描画エンジン――――

 『突如として出現した謎の超新星』『世界最高のVRゲーム』などとネット上でささやかれるようになり、『SR004』は公開性βテストとしては異例のプレイヤー人数を獲得。最終日にはユーザー人数は五万人を超えていた。それも、国籍関係なく、世界中のプレイヤーが集まっていたのだ。『SR004』が正式サービス開始に莫大な期待を寄せられていたのもうなずける話だ。

 そして、来たる一週間後、遂に『SR004』の正式サービスが開始されるのだ。現在稼働待ちのソフトダウンロード数は十万を超えているとも言われており、これは現在稼働するあまねくVRゲーム中、可動直前の数字としては歴代最高の数字であった。

 幸春もβテストに参加し、正規版の配信が開始されると、なけなしの小遣い(電子マネー)を使い切って『SR004』を購入した。

「あの世界に降り立った時、『本物の異世界に来た』と思ったんだ。初めてVRゲームをプレイした時も、まるで異世界に来たような感覚を覚えたけど、それをずっとずっと通り越して、『本物』を見た気がした――――」
「幸春、相当それに入れ込んでるのね」
「当たり前だろ」

 そこで幸春は驚きに目を見開いた。

 優里が、笑っている。普段の微笑とは大きく違う、慈愛に包まれた笑み。決して見れないと思っていた笑顔。

「……どうしたんだ、優里」
「へ?……どうしたって」
「すごいうれしそうな顔してた」
「え……」

 優里は笑みを消して、迷ったような表情をした。

「えーっとね……幸春が、そんなに嬉しそうな顔してるの見るのも、私、初めてなの」
「え?そうなのか?」
「うん。幸春、いっつも気付いてないけど、私と同じくらい……とは言わなくても、結構表情変わってない」
「マジか……」

 幸春は決して無表情ではない。それは優里も同じだ。能面、というわけではないの
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