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SR004〜ジ・アドバンス〜
20years ago ”Beginning of the world”
#01
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危うくこの話を始めた理由を忘れるところだった。幸春は右手の中指と人差し指をそろえると、小さく振った。すると、りりん、という軽やかな音と共に長方形のウィンドウが呼び出される。AVR技術が誇る、仮想携帯端末呼び出し機能。大規模な都市でしか利用できないが、今や日本で『大規模でない都市』など存在していても事実存在していないに等しい。過疎化が進みすぎて、人などほとんど住んで居ないためだ。

 VRウィンドウ上には、今日の月日や天気、簡易スケジュールから現在の幸春の体調に至るまでの様々な情報が記入されている。それらを無視して、横のオプションメニューから、携帯端末としての本来の機能を呼び出す。ファイルをいくつか操作して、最後に横のボタンを一押し。ウィンドウ上の表示が可視化され、優里にも見えるようにする。

 このVRウィンドウ不可視補正は、ウィンドウ上の個人情報を盗み見る輩を防ぐための機能だ。しかしこれを解かない限りには、必要でも他人にウィンドウを見せられない。だから、この様に可視化ボタンが設けられている、というわけだ。

「ほれ」

 幸春が優里に見せたVRウィンドウ上には、【最新鋭VRMMO、『SR004』正式サービスいよいよ開始】と書かれていた。

「『SR004』……?なに、それ」
「VRゲームの名前だよ。『システムロードゼロゼロヨン』と読むらしい」
「……ゼロゼロヨン?レイレイヨンでもゼロゼロフォーでもナンバーフォーでもなくて?」
「そう。ゼロゼロヨン」
「……何で四番目?」
「さぁ。気にするところじゃないだろ。題名に意味がある作品なんてこの所ほとんど無いぜ」

 珍しく優里が表情を変える。困惑したような表情だ。これは優里がその話題に興味を持った時にまれに見せる表情で、幸春は内心でよし、とガッツポーズをとっていた。

 『SR004』。

 日本語と英語の微妙に入り混じったワードであるが、妙に口に合うというか、言いやすい名前であった。

「で、その『SR004』がどうしたの?」
「ちゃんと見たのかよ。正式サービス開始ってあるだろ?」
「うん」
「こいつは三カ月ほど前まで、一カ月だけβテスト期間……言ってみれば『お試しプレイ』期間を設けててな。俺も参加したんだが……ものすごい完成度だった。そこいらのVRMMOなんて目じゃないぜ」

 《『SR004』βテスト・エディション》は、去る四か月前、突如VRゲームネクサスサーバー、《ザ・ユグドラシル》にアップロードされた。この《ザ・ユグドラシル》は、世界最大規模のVRゲーム作成ソフトの後継機で、現在42バージョン目に突入し、恐るべき数のVRMMOを有している。VRゲームは製作者の素性を問わない。『面白ければそれでいい』のだ。しかし、最古参のVRMMOも存在するこのゲー
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