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えすえふ(仮)
第二話 「宇宙の彼方にカレーパンを」
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う。

「宇宙刑事から逃げられると思うなッ!」
「くっ――速い!これ以上は逃げてもだめみたいですね……!」

これ以上の逃走は不可能だと悟った少女は、昇降口から二十メートルほど先にあるグラウンド、その中央で足を止め、こちらを振り返る。
彼女はこの学校の制服を着ていた。しかし、その姿に見覚えはなかった。身長は低く、亜麻色で、ひざ裏まで届く長い髪は、リボンによってお尻の辺りで纏められている。少し幼いが整ったその顔立ちは、学校にいれば噂が立つほどの可愛さだった。

「どうやら観念したようだな……『アランシア・カスペーゼ』!貴様をカレーパン不正流通の容疑で逮捕する!」

そう言うと、春香はポケットから手錠を取り出す。地球のものとは少し違っており、輪の淵にセンサーのようなものが付いていた。

「…………」
「ふん、大人しくお縄につく気になったようだな。さあ、痛くしないから手を出して――」

春香はアランシアと呼んだ少女に手錠を向けながら近づく。しかし、手錠がその手に掛かろうという直前に、アランシアは春香に睨みをきかせ、突き飛ばす。
不意を突かれたのか、春香は地面に尻餅をついた。

「うわっ!――くぅ〜、よくもやったな!公務執行妨害も追加だ!」
「春香!大丈夫か?!」

春香を助け起こそうと駆け寄る。そして、彼女に手を差し伸べようとした時、アランシアが声を張り上げた。

「私は――私は捕まらないッ!私は、私の夢を――こんな所で終わらせないッ!!」
「お前、何を言って――」

声を掛けようとするが、アランシアはもはや聞く耳を持たなかった。

「もうなりふり構っていられません!こんなこともあろうかと用意しておいた、アレを使う時――!来なさい!カレーパン強襲強奪用機動陸戦兵器……『インドラブレッド』ッ!!」

アランシアの声が辺りに響くと、突然地面が激しく揺れる。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……

「うわぁ!な、何だ?地震か?!」
「落ち着け冬二!……まさか、アレを用意していたとは――!」

そして、アランシアが立っていた地面が盛り上がり、地面の中から巨大な人型のロボットが姿を現す。ダークブラウンのカラーリングと、肩部装甲にカレーパンを手で掴んだ絵が塗られており、いかにもカレーパンを狙っていますと宣伝しているようなデザインだった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!なんじゃこりゃぁ!?」
あまりの出来事に一歩も動けず、ただ仰天するばかりだった。
ロボットの手のひらに乗っていたアランシアは、腹部のコックピットと思われる場所にカレーパンの入った袋とともに乗り込んだ。
コックピットが閉まると、アランシアはロボットをマニュアル操作に切り替える。

「こんなことで人を殺したくない……でも、私は……捕まるわけにはいかないッ!」
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